政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で岸田文雄首相の政権運営が揺らぐ中、2024年度予算案は1月召集の通常国会で〝火種〟となるかもしれない。政策の実現を裏付ける財源確保についての説明があいまいなうえ、歳出改革も手つかずの内容では、国民の理解を得られそうにないためだ。
昨年12月22日、24年度予算案が閣議決定した直後の記者会見で、鈴木俊一財務相は「物価上昇で予算単価の上昇も見込まれる中、歳出増を一定程度に抑制する」と同時に、「子供政策の財源もしっかり確保できた」と強調した。トリプル改定となった診療報酬改定を例に「財政健全化に向けた一つの道筋を示すことができた」とも語った。
だが、これを額面通りに受け取ることは難しい。診療報酬改定で医師や看護師の人件費に充てる「本体部分」は0.88%の大幅なプラス改定で決着。財務省は昨年、職員を総動員して全国約2万2千の医療法人の経営実態を調査し、診療所の高収益の実態を示して報酬単価の大幅な引き下げを求めていたが、賃上げを最重要課題に位置付ける官邸の意向に押し切られた。省内では「大敗北」(幹部)との受け止めが広がった。
鈴木氏は改定率の結果に対して周囲に不満をもらしたそうだが、政府関係者によると、改定率決着時の官邸での〝首相裁定〟に鈴木氏も同席したが、あっさり同意したという。
かつて消費税率の引き上げを巡る議論で、当時の麻生太郎財務相は安倍晋三首相に対し、財務当局のトップとして増税の必要性を安倍氏に直接説明するなど、存在感を示した。鈴木氏は麻生氏と親戚であり、岸田首相とも近いが、麻生氏とは存在感が異なるという見方が広がっている。