IHIは、航空機ジェットエンジン後方のテールコーン内部に搭載可能な1MW級の電動機を国内各社と連携し開発したことを発表した。

この開発プロジェクトは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「航空機用先進システム実用化プロジェクト」の委託業務「次世代エンジン電動推進システム研究開発/電動ハイブリッドシステム」において実施されたもの。同社は、航空機のCO2排出量削減に向けた技術革新として、エンジンを含む航空機システム全体のエネルギーマネジメントの最適化を目指す「航空機・エンジン電動化システム「MEAAP(ミープ)」)」を提唱しており、今回の開発はその実現に向けた取り組みの一環となる。

  • 高耐熱電動機「エンジン内蔵型電動機」

    高耐熱電動機「エンジン内蔵型電動機」(出所:IHI)

今回開発されたエンジン内蔵型電動機は、航空機内の電力需要増加に対応するための電力供給源としてだけでなく、現在、世界的に研究開発が行われているハイブリッド電動推進システムにおける重要なカギを握る技術として適用可能なものとなる。

すでに同社は、2020年3月に現在運航中の旅客機に搭載されている最大の発電機容量クラス250kW級のエンジン内蔵型電動機の開発に成功しており、今回の開発では、この研究開発で培われた300℃耐熱絶縁被膜を有する高密度成形コイル技術や、ジェットエンジンの研究開発で培った熱・流体・構造技術を活かした新開発の排熱システム技術のほか、発電機構造の見直しによる効率改善を図ることで、ハイブリッド電動推進システムとして適用可能となる1MW級の出力が可能な電動機を実現したとのことで、電動機自体は出力要求の変化に応じて柔軟に対応することが可能な設計となっているとする。

また、秋田県秋田市にある国内最大規模の電動機評価設備「秋田大学電動化システム共同研究センター」の新世代モーター特性評価ラボにて評価を行ったところ、テールコーン内部にエンジン軸直結した場合の回転数において期待される性能が得られることを確認したとする。

  • 電動化システム共同研究センター 新世代モーター特性評価ラボでの評価

    電動化システム共同研究センター 新世代モーター特性評価ラボでの評価の様子(出所:IHI)

なお同社は、今後も航空機の電動化に向けたハイブリッド電動推進システムの開発に取り組み、エンジン内蔵型電動機について2020年代半ばにはエンジンに搭載した形態での実証を行うことを目標に開発を進めていく方針を示している。また、同じく開発を進めている航空機推進用大出力電動モーター、燃料電池の空気供給を担う電動ターボコンプレッサ、高磁束プラスチック磁石ロータ、電動水素ターボブロアを組み合わせ、将来のハイブリッド電動推進システムを含むさまざまな推進システムから航空機システム全体の電動化・最適化にも取り組んでいくとしている。