米国の「国立半導体技術研究センター(National Semiconductor Technology Center:NSTC)」の運営を担当する「国立半導体技術推進センター(National Center for the Advancement of Semiconductor Technology:NATCAST))」のCEO兼管財人としてDeirdre Hanford(ディアドラ・ハンフォード)氏を選任したと米商務省傘下でCHIPS法に基づき政府助成金の分配責任を負う「国立標準技術所(NIST)」が1月16日(米国東海岸時間)付で発表した。

  • 2024年2月1日にNATCASTのCEOに就任予定のDeirdre Hanford氏

    2024年2月1日にNATCASTのCEOに就任予定のDeirdre Hanford氏 (提供:NATCAST)

実はNSTCやNATCASTは日本にも関係がしている。2022年5月23日に開催された日米首脳会談で両首脳は、日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)において採択された「半導体協力基本原則」に基づき、次世代半導体の開発を検討するための共同タスクフォースを設立することで一致した。

これを踏まえて、同年7月29日に開催された日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)において、次世代半導体技術開発に向けた、日米共同研究開発の推進に合意し、翌30日に日本側が「技術研究組合先端半導体技術センター(Leading Semiconductor technology Center:LSTC)」の設立計画を経済産業省が発表。12月にRapidus、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所を正会員として正式に設立された。

一方の米国側は、NSTCを設立することは決めたものの、現在に至るまで稼働できていない。LSTCとNSTCは連携を取りながら2nm以細の次世代ロジックプロセスの開発を行う計画だが、NSTCはようやくNSTCを運営し監督するNESCASTのCEOが2月1日付で就任することが決まった段階である。米商務省/NSTCは、人選や資金の流れなどすべてを透明性を持たせており、国民の税金を使うという見地から石橋をたたくような慎重さが目立つ。

ハンフォード氏は、EDA大手Synopsysに36年間勤務し、同社の成長を見てきた人物で、社内では主に半導体設計コミュニティとエコシステムの革新に注力してきたとされる。また、CHIPS法に基づいて設立された商務省の産業諮問委員会(IAC)のリーダーを含む、多くの業界諮問委員会の委員も務めてきた。

NATCASTによると、同氏は2024年2月1日付で正式にCEOに就任する予定で、当初は経営陣の構築、NATCASTと商務省との関係の最終調整、早期プログラム提供の優先順位付けに注力する予定だという。

NATCASTは現在、CEO補佐役、米国政府プログラム管理責任者、研究担当シニアVP兼CTOなどの要職を公募中で、すぐには始動できそうにない。またNISTも、スタンフォード大学工学部電気工学科のJim Plummer教授を理事長とする7名の理事を2023年11月に選任したばかりで、研究方針を話し合っている段階とのことで、すぐには始動しそうにはない。

これらの機関の監督官庁であるNISTはCHIPS法にもとづく半導体メーカーへの補助金支給の責任を負っているが、750社が関心を寄せているといわれている中で、まだ中堅メーカー2社に少額の支給を決めただけである。すでに米国内にて工場建設を進めている国内外の大手半導体メーカー各社からは、補助金の支給が決まらなければ計画通りに稼働できないとの不満が出ているようである。