生成AIの訓練データを巡る著作権問題の解決に取り組む非営利団体「Fairly Trained」が立ち上げられた。著作権を尊重したAIモデルを示す認定プログラムを提供する。
生成AIの開発競争の激化に伴い、画像、動画、テキスト、音声といったコンテンツをAIに学習させることの権利を巡り、AI開発企業と著作権者の対立が深まっている。AI開発企業のアプローチは一様ではなく、トレーニングデータ提供者の同意を得る企業と、フェアユースを主張して同意を得ない企業に大別される。生成AI技術の有用性と可能性を認める企業や個人の多くは、前者に対して協力したいと考えているが、現状ではAI企業がどちらのアプローチを取っているか判断するのは難しい。Fairly Trainedは、トレーニングデータの使用に同意を得るAI企業に認定を提供することで、この状況を変えようとしている。
最初の認定は「Licensed Model」で、著作権のあるものに関してはライセンスを得たコンテンツのみをトレーニングに使用している生成AIモデルを認定する。カスタムライセンスや寛容なオープンライセンスなど様々な種類が用意されているが、フェアユースに基づいた著作権例外や類似性に依存するAIモデルは認定対象外である。
「この認定がトレーニングデータの取得に公正なアプローチを取っている企業を示す有用な指標となることを期待しています」とFairly Trainedは述べている。Beatoven.AI、Boomy、BRIA AI、Endel、LifeScore、Rightsify、Somms.ai、Soundful、Tuneyなどが、すでに認定を受けている。
Fairly TrainedはEd Newton-Rex氏を中心に設立され、同氏がCEOに就任した。Newton-Rex氏は以前、英Stability AIでオーディオチームを率いていたが、著作権問題で対立し、AI開発者が著作権者の同意なしに著作権のあるコンテンツをAI訓練に使用することは「搾取的」であるという見解を表明して退任した。Fairly Trainedには、Siri開発で知られるTom Gruber氏、Granderson Des Rochersの新メディア部門のシニアパートナーであるElizabeth Moody氏、アメリカ出版協会(AAP)のMaria Pallante氏(プレジデント兼CEO)、Max Richter氏(作曲家、ピアニスト、プロデューサー)がアドバイザーとして参加している。今後については、データセットの取得に関するより複雑な議論、例えばオプトイン対オプトアウトなどにも対象を広げる計画である。