苦節8年、経営の混乱に終止符 東芝が上場廃止で再出発

新体制にはJIPや中部電力の幹部が就任

「安定した経営基盤のもと、光り輝く東芝を取り戻す。よりお客様のニーズに応えていけるよう、変革をリードしていく」

 東芝社長の島田太郎氏は、新体制の発足に当たってこう決意を示した。

 日本産業パートナーズ(JIP)やオリックス、ロームといった国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立し、東芝は12月20日に上場を廃止。2日後の22日に開かれた臨時株主総会で、島田氏が続投する新経営体制が承認された。

 2015年に発覚した不正会計問題や17年の米原子力子会社破綻などで財務が毀損。海外ファンドをはじめとする〝物言う株主〟からの出資を受け入れたことによる東芝の8年間にわたる経営の混乱に一応の終止符が打たれた形だ。

 新体制の取締役は7人で、島田社長を除く6人が社外からの登用だ。JIPからは馬上英実社長や、池谷光司副会長ら4人が就任。国内連合への参加企業からは、中部電力の勝野哲会長とオリックスの井田明一事業投資本部副本部長が加わった。

 池谷氏は三菱自動車の副社長や三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)の専務執行役員を歴任した。また、三井住友銀行の執行役専務だった小塚文晴氏が今回、東芝の専務執行役員に就いた。新体制にはガバナンスや財務規律を強化したい思惑が見てとれる。さらに東芝は4つの分社体制を実質的に廃止した。主要4子会社の社長は島田氏が兼務し、4社の法人格の統合も検討する。

「東芝は間接部門の固定費が重く、JIPはコストカットを求めている」(業界関係者)との見方がある。東芝は人員削減について「決まっていることはない」(島田氏)とするが、グループ再編の過程で大ナタが振るわれる可能性は低くない。

 再建の過程で、虎の子だった半導体メモリーや医療機器などの主力事業を手放した東芝。島田氏はパワー半導体やデータビジネスなどで成長を目指す考えを示すが、実行するのは現場の社員だ。経営の混乱で疲弊した従業員の意欲を高め、成長戦略に実効性を持たせられるか。東芝の真の戦いはこれからだ。

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