さくらインターネット、高知工科大学、シティネット、近畿大学の4者は1月16日、東京大学および大阪大学サイバーメディアセンターと共同で実施しているBeyond 5Gに関する研究において、クラウド/MEC(Multi-access Edge Computing)/デバイス間でシームレスにアプリケーションの実行が可能という広域分散実行プラットフォームである「Giocci」を開発したと発表した。
分散コンピューティングに関する共同研究
6者は2021年11月から、情報通信研究機構(NICT)が実施するBeyond 5G研究開発促進事業である研究開発課題名「関数型パラダイムで実現するB5G時代の資源透過型広域分散コンピューティング環境」に参画し、分散コンピューティングに関して共同で研究を実施してきたとのこと。
この研究活動の一環として、クラウド/MEC/デバイス間においてシームレスにアプリケーションを実行可能にするという関数型言語であるElixirによる広域分散実行プラットフォームを開発し、高知工科大学内のローカル5G設備と「さくらのクラウド」などのクラウドを使用しマルチクラウド環境を接続した広域分散コンピューティング実証実験環境や、ソフトバンクが構築したSegment Routing IPv6 Mobile User Plane(SRv6 MUP)ベースのMEC環境を利用して、サンプルとなるアプリケーションを稼働させフィールド・トライアルを実施する。
広域分散実行プラットフォーム「Giocci」
新たに開発したGiocciは、Beyond 5G通信網の多様な計算資源と通信手順を抽象化し、自律性を持ったプロセスによる透過的な処理配置を可能とすることで、Edge NodeとEngine Node同士の双方向アクセスを実現し、Node上の処理はElixirにより超並行および並列処理を実現するという。なおGiocciのソースコードは、Apache2.0ライセンスの下オープンソースで公開している。
Giocciの使用により、実行環境の複雑さに関係無く一貫した1つのシステム開発のみでサービスの構築を可能にしたとのこと。
また今回構築したMEC環境では、Giocciの機能により、要求性能や遅延時間等に合わせて最適な箇所でアプリケーションを実行可能という。
今後の方針とそれぞれの役割
将来的には、複数のローカル5G環境や商用MECサーバ、クラウドをシームレスに接続することで、5G環境下にあるコンピュータが要件に合わせて任意のMECサーバやクラウドのコンピューティング・リソースを利用することや、クラウドから広域に遍在する5G環境下にある多様なコンピュータへアクセスを可能にすることも想定しているとのこと。
このフィールド・トライアルを通じ、多様なIoT機器と環境内のコンピュータを組み合わせ、次世代のコンピュータ通信インフラであるBeyond 5Gを実現するための研究開発および実証実験を推進するとしている。
同研究において、さくらインターネットはクラウド環境を提供すると共に、エッジ・コンピューティングの技術開発、またBeyond 5G時代におけるアプリケーション想定とこれに適合するコンピュータ通信インフラの実現に向けた検討を実施している。
高知工科大学は、構内にローカル5G設備を整備しテストベッド環境としての提供に加え、5G基地局、交換局(5Gコア)、外部ネットワーク接続、5G端末について、構築・利用・運用の高度化のための技術開発などを担っている。
シティネットは、Giocciの設計・構築を担うと共に、各大学とマルチクラウド環境をSINET6で接続したインフラの設計および構築を行っている。
近畿大学は、広域分散環境における資源配置問題に関するアルゴリズム研究を情報学部で担当している。