裏金疑惑が岸田政権を直撃 経済再生や防衛力強化に影響

24年は海外で大きな選挙

 自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が岸田文雄政権を直撃している。岸田首相は、自身もキックバックが指摘されている松野博一官房長官の更迭に加え、閣僚・副大臣・政務官や党幹部から安倍派をほぼ一掃する大胆な策に出た。事実上の「内閣改造」で国民の信頼回復を図る考えだが、最大派閥・安倍派抜きの政権運営は不安定さを増すことが確実だ。

東京大学公共政策大学院教授・鈴木寛「その人の可能性を掘り起こす。徹底的に一人ひとりと向き合う〝教育の公正な個別最適化〟を」

 政治の空白は国民にとって肝心なことを目立たなくさせる。経済再生を後押しするはずの2024年度予算案の編成は、政治騒動の煽りでかすんだ。24年の通常国会では、国民の評判があまり良くないとはいえ、1人当たり4万円の定額減税を同年6月から実施するための関連法改正も待っているが、もはや話題に上ることが少ない。

 ほかにも少子化対策や防衛力強化の財源問題など課題山積だが、政権が安定しなければ、どんな政策も理解されにくい。終わりの見える政権には、その実行力に疑問符がつくからだ。

 とはいえ、岸田政権の後に果たしてどのような政権が誕生するのか。自民党の首相であれば、これまでの延長線上で疑惑の追及を受け続けることになるだろう。連続7年8カ月務めた安倍晋三元首相以前の、毎年トップが変わるような事態が生じかねない。

 不安定な政権が続くことは外交でも日本の不利益になり得ることは、過去の経験則でもいえる。日本の顔が毎年変われば、まともな外交は機能しない。

 ウクライナやパレスチナの悲惨な情勢はいまだ終息せず、24年は1月の台湾総統選、3月のロシア大統領選、4月の韓国総選挙、そして11月の米大統領選と大きな選挙が相次ぐ。軍備増強を続ける中国、核・ミサイル開発で挑発する北朝鮮は相変わらず脅威となっている。

 内外に不確実な状況が続く中、日本のカジ取りをどう進めていくか大事な時。今はデフレ脱却の道筋が見え始めた時だけに、政治の果たすべき役割は重いものがある。

 日本再生のビジョンを構築できず、政争に明け暮れていては国民のためにならない。与野党の責任はそれぞれに重い。