【2024年をどう占う?】答える人 日本航空会長・植木義晴

新型機材が国際線にも就航へ 中長距離専門のLCCに期待

 ─ インバウンドで弾みがつき始めている日本航空会長の植木義晴さん。23年を踏まえた上で24年を見通してください。

 植木 20年4月の緊急事態宣言が発出された翌月、国内線の旅客数はコロナ前比で8%、国際線は1%。需要はほぼ喪失しました。そんなところから徐々に回復し、22年には水面から首が出るくらいになりました。そして23年にようやく膝から上が覗かせるぐらいになりました。その意味では、よく頑張ったなと思います。

 私が誇らしく思うのは、社長の赤坂(祐二)がどんな状況になっても会社は1人の社員も辞めさせないと宣言したこと。ボーナスも出せない中でも、社員が会社の状況を理解してくれて、23年の冬、冬の一時金としては、再上場以降、最高となるまでに回復しました。私も50年近く会社にいますが、初めて社員に本気で喜ばれました(笑)。

 コロナ禍では航空需要が減少し、何千人という社員が外部出向し、様々な経験を積んでくれました。そして必死になって頑張ってくれたお陰で、各自治体や各企業がJALファンになってくれました。これは大きかったですね。出向した社員も様々なノウハウを持っていますから、急に需要が伸びても、しっかりと対応できるだけの蓄えが我々にはありました。

 ─ その中で今後はどんな戦略を展開していきますか。

 植木 新型機「エアバス350-1000」が国際線のメイン機材として旧型機材と置き換わっていきます。一番の効果は燃費です。同じ大きさの従来機よりも15~25%燃費が良くなります。4年前から国内線で使っていますが、驚くほどの性能の高さです。しかも、国内線という短距離より国際線という長距離で使った方が効果は大きい。

 当社は50年にカーボンニュートラルを目指していますので、その実現にはどうしても必要な機材になりますから非常に期待しています。

 ─ コロナ禍の真っ只中で就航したLCC(格安航空会社)にも期待がかかりますね。

 植木 ええ。「ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)」という中長距離専門の国際線だけを飛ぶLCCをグループ内に100%子会社として設立し、20年から就航しています。実はこの会社は私の夢でもあり、これをやらないうちは社長を辞めることはできないと思っていたんですね(笑)。

 ただ、運航を開始したのは20年の6月。最悪のタイミンングでした。でも使用機材を生かして貨物を運ぶといった取り組みを行い、実は同社がJALグループの中で最初に単月黒字化を達成しました。今では順調に路線網を増やしていますので、今後が非常に楽しみです。