鹿島は1月10日、道路橋床版取替工事に伴う交通規制を短縮できるという「スマート床版更新(SDR: Smart Deck Renewal)システム」を、関越自動車道阿能川橋床版取替工事と広島自動車道奥畑川橋床版取替工事に初めて適用したと発表した。この結果、既設床版の撤去から新設床版の架設に至る一連の作業において、最大85%の工期短縮が可能なことを実証した。

  • 床版取替工事の施工状況

新システムの概要

道路橋の床版取替工事では、工事に伴うソーシャル・ロスを低減するため、交通規制の期間や範囲を最小限にする技術に加え、近接する交通や周辺施設への安全確保が求められている。

このため同社は新システムの開発に着手し、2019年には全断面(2車線道路の場合2車線規制)取替、2022年には幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替を対象とした総合実証実験を行い、実工事への適用に向けて準備を進めてきたとしている。

  • SDRシステムによる床版取替工事の概要

同システムは、床版取替に関わる4つの工程である1)既存床版の撤去、2)主桁ケレン、3)高さ調整、4)新設床版の架設の作業を、それぞれの専門班が各エリアにおいて同時並行で行う、いわば「移動式工場」を目指した施工システムという。

上記4工程の作業を順々に繰り返していく標準的な工法と比べ、各専門班が同時に並行して作業できるため、工期の大幅な短縮が可能とのこと。

工期短縮に関しては、大型クレーンを1台用いる標準的な施工方法に対し、既設床版の撤去から新設床版の架設までの一連作業に要する時間を、全断面取替で約1/6、幅員方向分割取替で約1/10に短縮できるという。

安全性に関しては、既設床版撤去機および新設床版架設機の内部を、床版搬出用トラックおよび運搬台車が通過できるため、床版の旋回を伴うクレーン揚重作業が不要とのこと。

これにより最小規制範囲での施工が可能となり、一車線規制による幅員方向分割取替時においても、近接する交通や周辺施設に対する安全性を確保できるとしている。

軽量化に関しては、軽量な床版撤去機および床版架設機を用いることで、大型クレーンを用いる標準的な施工方法と比べ、施工時に機械設備の重量が鋼桁に与える影響を1/2~1/3へ低減できるという。

  • 関越道阿能川橋における新設床版の架設状況

  • 広島道奥畑川橋における既設床版の撤去状況

75~85%の工期短縮が可能

工期短縮の実証に関して、大型クレーンを用いる標準的な施工方法では、1日(7時間)あたり3枚の床版取替が一般的という。

一方、同システムを適用した関越自動車道阿能川橋では12枚/日、広島自動車道奥畑川橋では22枚/日の床版を架設でき、75~85%の工期短縮が可能なことを実証したとしている。

今後の同社は、今回の工事適用で得た知見を踏まえ、今後も安定した工期短縮効果が得られるよう同システムの改良を重ねていくという。

併せて、床版取替工事の更なる機械化および自動化を目指して研究開発を進め、道路橋更新工事に伴うソーシャル・ロスの最小化に貢献していくとのことだ。