2024年度の航空需要は回復スピードを上げていく
─ ANAホールディングス会長の片野坂真哉さん、コロナ禍で影響を受けた航空業界ですが、新年の展望は?
片野坂 コロナ禍は悲惨な状況でしたが、2022年から需要が戻り、23年3月期は3年ぶりの黒字となりました。23年には「5類」に緩和され、人々の移動が一段と復活したのです。コロナ前には年間売上高2兆円だったものが一時半減以下になりましたが、今上期だけで1兆円に達しています。グローバルで人々の移動が盛んになり、国際線のファーストクラス、ビジネスクラスが満席になっているのは嬉しいですね。
─ 国内線の状況は?
片野坂 足元ではコロナ前の8割程度で、今年度は9割くらいに戻るのではないかと見ています。その意味で、24年度の航空需要は回復のスピードが上がっていくだろうと考えています。人々の意識の変化もあり、国内線のビジネス需要はコロナ前に戻らないかもしれませんが、レジャー需要は今後、企業における長時間労働からの脱却や、ワーク・ライフ・バランスの浸透で大いに期待できます。
─ インバウンドも盛んになり、空気が変わりましたね。
片野坂 明るくなりましたね。かつての目標だった3千万人に向かっていくと思っていますが、今全国で懸念されているのが「オーバーツーリズム」です。ネガティブな状況にならないように工夫をしていこうと。
今、インバウンドの方々は、日本の文化や歴史を大事にしながら、日本の隅々までの観光を自ら発見し、SNSなどを通じて発信する時代です。日本人でも知らない地方の文化を発信していただくことで、そこにまた海外の人が訪れる。この流れは地方活性化に寄与するのではないかと見ています。
─ 日本文化が海外の人に評価されていると。
片野坂 ええ。ただ、アジアや中国のLCCは羽田や成田がいっぱいですから、地方空港に入りたいわけですが、問題があるのがグランドハンドリング(地上支援業務)の人手です。そこで業界を挙げて「空港グランドハンドリング協会」を設立し、人手の確保に向けてアピールしています。
同時にデジタル化も重要です。羽田空港には「スマートレーン」といって、最新の画像解析技術で保安検査の時間短縮ができるレーンがあります。これによってグランドハンドリングの負担を軽減しています。
─ 各業界で人手不足が深刻化していますね。
片野坂 「2024年問題」もありますが、全国でエッセンシャルワーカーが不足しています。社会を支える人たちの働く環境を整えることが大事です。