2024年の年頭にあたり、富士通 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏は年頭所感として、以下を発表した。
年頭挨拶
新年、明けましておめでとうございます。
1月1日、石川県能登地方において、震度7の揺れを観測する地震が発生しました。被災された皆様に、富士通グループを代表して心よりお見舞いを申し上げます。
2023年は、この数年間の空白を埋めるかのように、国を越えて多くの方々にお会いしました。5月にG7広島サミットが行われ、各国政府や企業のトップが訪れたことも、同じ目的に向かってつながる世界を象徴する出来事だったと感じました。一方で、引き続き紛争や環境問題の深刻化による分断が進んでいます。また、国連の定める持続可能な開発目標(SDGs)は、現在のペースでは2030年の達成が非常に厳しく、17のゴールにおける「経済成長」と「環境保全」など、トレードオフを懸念する声も上がっています。富士通が未来のために何ができるのかを、常に考え続けた一年でした。
そのような中、富士通は新たな中期経営計画を発表し、持続的な成長に向けた経営における重点課題、マテリアリティとして「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイングの向上」の三つを明確にしました。これを事業活動として行動を起こしていくため、マテリアリティ視点での事業推進体制の構築を進めています。その一環として、気候変動、デジタル格差といった、事業を通じて取り組む必要不可欠な11の貢献分野に対し、「Fujitsu Uvance」のオファリングを関連づけ、富士通がどのように貢献していくのかをより明確にしました。
そして、「Fujitsu Uvance」のオファリングを強化する源泉は、最先端のテクノロジーです。昨今の生成AIの飛躍的な進化、そして、浸透に代表されるように、今後もテクノロジーは人々の生活や経済活動にイノベーションをもたらすと考えています。富士通は、お客様や社会に対し、テクノロジーを価値として提供する企業です。このように、テクノロジーが存在感を増し、人の生活に欠かせないものになっていく時代において、人が果たすべき役割を、新たな年のスタートにあたり考えたいと思います。
私は、二つのことを考えています。
一つは、倫理です。AIは人が生み出し、人の知能を模倣し、そして、人の能力を拡張するテクノロジーです。そのため、人の持つ偏見や倫理観が、AIの働きに大きな影響を与えます。悪意や偏見が組み込まれたテクノロジーが、人に幸せをもたすことはありません。テクノロジーが、より持続可能で豊かな社会の実現や、人々のウェルビーイングの向上に寄与するためには、私たちが目的を忘れずに正しい倫理観を持ち続け、また周囲にも良い影響を与えていくことが、ますます重要になっていくでしょう。テクノロジーを創造する富士通は、ここに非常に大きな責任を担っていることを、今一度認識する必要があります。
もう一つは、信頼です。ウェルビーイングに必要な要素の一つに、Relationship、他者との良い関係があります。家族や友人、仲間といった、人とのポジティブな関係や、自身が社会や人に貢献できていると感じられる状態は、心を満たし、幸福感をもたらします。テクノロジーによって私たちの判断や行動が高度化され、またパンデミックを契機に、生活のあらゆる場面でデジタルシフトが加速しました。一方で、直接顔を合わせ、場を共有するコミュニケーションが、人々にとっていかに大切であるかが、改めて認識されました。他者を思いやり、信頼関係を築くことは、人にしかできません。テクノロジーをうまく活用しながら、思いを共有できる良い関係を築いていくことが重要です。
富士通は、お客様やパートナーをはじめとする幅広いステークホルダーと共に、社会にポジティブなインパクトをもたらしていくことを目指しています。この取り組みのベースとなるのは、Diversity, Equity & Inclusionです。社会は多様性にあふれており、幅広い意見や価値観を受け入れることは、社会課題の解決に臨む私たちに新たな強みをもたらします。他者や異なる価値観をリスペクトする気持ちを持ってヘルシーなコンフリクトを起こしながらも、信頼関係を築き、自分たちの描いた姿を実現していきます。
今年は「Fujitsu Uvance」を中心とするサービスソリューションの提供体制の最適化やOneFujitsuを進め、より強い企業体質を作ります。2024年を、富士通の、また個人のパーパス実現に向けた飛躍の年にしていきたいと思います。