【ずいひつ】メイキップ・柄本真吾社長が語る「洋服の返品を減らすことが社会課題の解決につながる!」

モノが溢れる時代となり、環境対応が迫られています。アパレル業界でも同様です。店舗での販売が主流だったアパレル業界ではECが広がり、誰でも簡単に洋服を選び、購入できるようになりました。ところが、アパレル業界特有の課題が出てきています。それが「返品」です。

 皆さんは洋服を買うときに自分のサイズを判っているでしょうか。実は洋服のサイズはブランドごとに異なります。JIS(日本産業規格)で決まってはいるものの、各ブランドは自分たちの洋服を綺麗に着こなすために独自の規格を設けているのです。それは企業秘密になります。つまり、自分のサイズがMだと思っていても、ブランドごとに合っているかは違うのです。

 そんな中でECの普及で試着がなくなりました。そのため、ECで購入して着てみたけど、身体に合わず、それを返品する動きが課題になっているのです。当社はアパレルメーカーが公表する商品情報や自社で蓄積したユーザーの登録情報などからブランドごとに想定するユーザーの身体の大きさを解析し、そのサイズの洋服を推奨する「unisize(ユニサイズ)」というサービスを展開しています。

 ユニサイズは国内外の約4万ブランドの商品データを600万件以上蓄積し、購入履歴のデータも7000万件蓄積しています。このデータベースがあるからこそ、購入者の体型データをマッチングさせて当社のAIが購入者の身体に合った洋服のサイズを導き出せるのです。

 なぜ、こんなことができるのか。それは私の原体験があります。私は筑波大学のラグビー部に所属していました。ラグビーというスポーツの性格上、太股が人一倍太くなる傾向があります。私自身もそうです。欲しいブランドのジーンズがあってもサイズが合わないために諦めるしかありませんでした。「サイズで悩まない社会を実現したい」。この思いが2015年の当社の起業につながりました。

 まずはデータを集めなければなりません。しかし、そもそも体型データをどう集めれば良いのか。先輩から聞いたのは国立研究所が数百人の身体の部位のデータを集めているということでした。それを聞きつけた私はすぐに電話を入れて交渉。これが当社の基盤となりました。

 その後は、店舗に出向いて実際にデータが適しているかどうかを調べるなど、泥臭い現場回りを続けていくことで、他にはない膨大なデータの蓄積へとつながりました。今では300以上の企業のECサイトに導入いただいており、返品率も平均で20%下げています。返品率が下がれば企業に負担を強いられる商品の発送などの手間暇がなくなり、本業に注力いただけます。

 さらに今では「ユニサイズDX」というサービスも展開しています。ユニサイズに蓄積されたユーザー体型データやECサイトでの試着行動データ、購入データを活用した課題発見ツールです。ECサイトを展開するだけでは把握しにくかったサイト訪問者のユーザー体型を知ることができる上に、商品やサービス、販売促進の見直しにも活用することができます。

 洋服の返品をなくすことは様々な社会課題の解決に寄与できます。人手不足が顕著なトラックの運転手不足の解決や輸送時の二酸化炭素の排出をなくせるなど、環境面でも寄与できます。買ったものを最後まで使う─。それは今の若い世代に共通している感覚でもあります。

 身体に合った洋服を諦めざるを得ないという身近な困り事の解決が社会課題の解決にもつながっているのです。