【2024年をどう占うか?】答える人 塩野義製薬会長兼社長CEO・手代木功

薬の出発原料は海外依存 国内製造に向けて研究を開始

 ─ 22年に国内で初めて新型コロナ感染症治療薬を開発した塩野義製薬会長兼社長CEOの手代木功さん、コロナ禍3年をどのように総括しますか。

 手代木 地球が小さくなったと感じます。中国・武漢で発生したと言われる新型コロナのウイルスは、その後、変異を繰り返し、オミクロン型に至っては南アフリカで検出されてからわずか3~4週間で、世界中のウイルスが置き換わりました。

 しかも、我々の生活に致命的とも言われるほどのインパクトを与えたのです。今回のパンデミックをどのように人類が咀嚼して消化した上で、次に来るパンデミックに取り込んでいくか。それが問われています。

 ─ まさに100年に1度と言われるインパクトです。

 手代木 国と国との分断をも生み出しました。ワクチンが行き渡っている国と行き渡っていないLMIC(低中所得国)との格差の課題も解決されないまま、再びパンデミックが起きたらどうなるか。真剣に考える必要があります。

 ─ 医薬品は安全保障に絡む物資に位置づけられました。

 手代木 はい。特に原薬の原料、つまり医薬品を作るための出発原料をどう確保するかが重要です。例えば抗生物質の出発原料は、ほぼ全てを中国を中心に海外に依存しています。海外から確保できなければ、最終製品としての抗生物質を国内では作れなくなります。それだけ医薬品に関するサプライチェーン(供給網)は脆弱なのです。

 3年前に中国の出発原料を製造する企業の工場が事故を起こして医薬品を製造できなくなったことを教訓に、当社は出発原料の一部を国内で製造するための研究を始めました。また、当社の自社製品で、患者様の命にかかわり、代替品のない薬については、できるだけ国内で製造できないかと洗い出しを進めているところです。

 ─ 国内で製造できれば設備投資や雇用も生まれ、経済活性化にもつながりますね。業績が好調な中、特別早期退職プログラムを実施しました。

 手代木 当社は30年のありたい姿を「SHIONOGI GROUP  Vision」でまとめています。そこでは創薬型製薬企業として医薬品の提供にとどまらず、顧客ニーズに応じた様々なヘルスケアサービスをグローバルに提供するHaaS企業を目指しています。今までの我々とは一段階違う企業になるわけです。

 5年前から自らの能力をレビューし、能力向上が難しい場合には別のキャリアに進んでいただくことも選択肢だと言ってきました。その代わり、新しい能力を持つ人材を採用していきます。ですから、今回の取り組みは新しい企業集団になるための能力の入れ替えなのです。