The Hacker Newsは1月2日(米国時間)、「Google Settles $5 Billion Privacy Lawsuit Over Tracking Users in 'Incognito Mode'」において、Googleがシークレットモード中のプライバシー保護を巡って争っていた訴訟において、原告と和解したと伝えた。2020年6月に開始されたこの集団訴訟で、原告は、ユーザーがGoogleのWebブラウザでシークレットモードを選択したにもかかわらず、ユーザーの行動情報の収集が続いており、プライバシー侵害にあたると訴えていた。

  • シークレットモード中のユーザの行動追跡に関する諸相でGoogleが和解に合意

    シークレットモード中のユーザの行動追跡に関する諸相でGoogleが和解に合意

Google Chromeのシークレットモードとは

Chromeのシークレットモードは、閲覧履歴やCookie、フォームへの入力情報などといったデータがWebブラウザに記録されないようにするモードである。これによって、同じデバイスを使用する他のユーザに閲覧履歴などの情報を知られることを防止できる。ただし、ユーザのアクティビティが閲覧先のWebサイトや使用しているインターネットプロバイダなどに通知されないわけではない。

原告がシークレットモードがプライバシー侵害に当たると主張する理由

これについて原告は、Googleはあたかもシークレットモードによってユーザーの行動履歴に関する情報が第三者から保護されるかのように誤認させていると主張した。Webブラウザの開発者やWebサイトの管理者によって、インターネット上の自分の行動を追跡されることに懸念を抱いているユーザーは少なくない。

「シークレットモード」や「プライバシーモード」は、確かにこの懸念を払拭してくれそうな名称である。Googleはユーザーがこのように誤解することを認識していながら、それを宣伝材料に使って不当にユーザの拡大を試みたというのが原告側の主張である。要求された損害賠償金額は少なくとも50億ドルに上る。

裁判におけるGoogleの反論

これに対してGoogle側は、シークレットモードの起動時のメッセージでこの機能の挙動についてユーザーに伝えていると反論した。Googleが証拠として提出した2020年8月20日時点のスクリーンショットでは、たしかにシークレットモードでもユーザーの行動履歴がインターネットプロバイダやWebサイトの管理者に送信される可能性があることが警告されている。

ただし、この説明がいつから表示されるようになったのかについては、原告・被告それぞれからさまざまなバージョンの証拠が提出されており、明確に認定はされていない。

  • 2020年8月20日時点のプライバシーモードに関する説明(Googleによって提出された証拠より)

    2020年8月20日時点のプライバシーモードに関する説明(Googleによって提出された証拠より)

連邦地方判事は最終的に、Googleが行動履歴データを収集することをユーザーに対して明示的に伝えていないことから、ユーザーがデータ収集に明示的に同意したと認定することはできないと結論付けている。この結論が、Googleが原告との和解に合意する決定打になったと考えられる。なお、和解条件の詳細は明らかにされていない。

シークレットモードで行動履歴が第三者に送信されることは変わらず

注意しなくてはならないのは、現在においてもシークレットモードで行動履歴が第三者に送信されること自体は変わっていないという点である。そして、この機能について誤解しているユーザは依然として少なくない。Chromeのヘルプページでは、このようなシークレットモードの挙動について以前よりも明確に説明されている。