2024年の年頭にあたり、Univers Japanのカントリーマネージャーの百合田和久氏は年頭所感として、以下を発表した。
日本の「ネットゼロ」に貢献
明けましておめでとうございます。 このたびの令和6年能登半島地震により、被災された皆様へ心からお見舞い申し上げるとともに、皆様の生活が1日でも早く平穏に復することをお祈り申し上げます。
2023 年を振り返って
世界の再生可能エネルギー産業にとって2023年は、低金利と技術革新によるLCOE(均等化発電原価)の低減という追い風が、インフレと借入費用の上昇に取って代わられたため、ある意味で困難な年となりました。
国内的には、政府等による政策運営が結果的に功を奏し、金利や物価の社会的影響はそこまで大きくありませんでした。しかし、インフレと金融環境の変化・先行きを読みながらのビジネス展開が常套手段となったという点では、世界とは多少の時差があるのみで、同じ流れだと考えています。2023年、日本ではNTTとJERAによるグリーンパワーインベストメント(GPI)の巨額買収があった一方、米国では洋上風力最大手デンマークのオーステッド社が巨額減損を計上しました。これは、日本と世界潮流の時差を象徴する例だと思います。
当社のグローバル事業においては2023年、アジア有数の金融グループやシンガポールの主要な中等教育機関、欧州最大級の港湾会社など、業界をリードする多くの企業との新たなパートナーシップを発表しました。それらは当社の着実な前進を象徴するものであり、特に気候変動のような世界的な課題に立ち向かう際には不可欠なものです。当社は、「Univers」という新しい名前の下、最先端のデジタル・ソリューションを活用し、より持続可能な未来に向けて、引き続きグローバルでの取り組みを進めています。
日本では、顧客である再エネ事業者にとっての新規開発に対する見通しが、金利や電力販売契約(PPA)価格、設備投資(Capex)の変動、開発要件に関わる規制変化などにより、予測の立て難い環境におかれた事で、事業運営費と売電収益の最適化に対する顧客の関心が一層高まった年となりました。再エネ業界は専門人材の不足と人材の流動性の高さに起因し、属人性を排除しながら効率的な管理を可能にするDXへの希求性が高いため、運営面への体制強化の流れは、当社の日本での貢献規模の拡大に直結するターニングポイントになる年だったと考えています。
2024年の業界トレンド予測
2024年は、グローバルでも国内でも、「脱炭素価値」が不可逆的な共通価値として、本格的に浸透していくと予測しています。現在、グローバルでは「I-REC」「GO」「REC」といった、地域ごとに適用できるものが限られた規格があり、国内では「非化石証書」「グリーン電力証書」「J-Credit」といった証書・認証制度が施行されています。
それぞれ重複適用ができないのは当然ですが、脱炭素という共通目標に対して、運用方針はそれぞれ異なっています。これらは、いずれ住み分けがはっきりするか、いずれかがデファクトスタンダードになると考えています。
今後は、綺麗な電源に変換するという補助金に支えられた Capex ドリブンの脱炭素化から、いかに二酸化炭素排出量を減らすか、その為にグリーン電源を創る、エネルギー使用量を抑える、そしてグリーン電源のavailability に合わせて負荷をコントロールする――という事が、より一層強く認識されていくと思います。
脱炭素価値の規格化は、脱炭素化へ向けたアクションに対して経済性におけるインセンティブを付与する試みです。再エネの場合は、売電収益の投資利回りや、空調最適化なら電力消費量削減による経済効果といった、旧来では単独の経済指標に依存していたものに新たな価値を付加するものです。
これらは人々や社会に、ポジティブな転換を促す因子として期待されます。また、この価値の複層化はより一層、需要家や施設オーナーといった最終ユーザーが自ら、発電事業者や施設運営者に近づいていく流れを助長するものであり、従来の資金の出し手側と、サービス提供側、もしくは発電事業者と消費者といった区分けの界面を曖昧にしていく事につながると思われ、ビジネスにおける意思決定の回転率を上げる因子になりうると想像します。
Univers Japanの2024年の目標
当社は、ポートフォリオ単位でのクリーン電源の施設運営の合理化、販売先(PPA、自家消費、市場取引)の合理化に加え、ビル・港湾・空港などの施設電源使用の効率化、発電電力・消費電力の効率化を通じて得られる脱炭素価値の定量化――という、「ワンストップ・サービス」のソリューションを提供しています。これは言わば、電力運用全般における OS の提供であり、諸外国ではその全てをつなげて利用している顧客実績もあります。
日本では、電力販売の運用、脱炭素価値の定量集計といったソリューションについて市場適応化の開発を進めており、2024 年はそれらを一つずつ追加開発・提供していくことを目指します。既に、いくつかの先見的な大手企業との協議も開始しており、日本市場への導入を通して、顧客の既存のシステムや IT ツールの 限定的な機能性によって生じる、脱炭素の価値や計量に対する制約の解消を図っていきます。
当社は、従前からある日本のエコシステムを尊重しながら、既存のソリューションとの差別化部分に特化して、弊社が補完できる統合部分にフォーカスを当てたソリューションを提供していきます。当社が本社拠点を置くシンガポールは、国家全体でエネルギーデータマネジメントモデルを実現しつつあります。将来的には、それを日本で再現し、日本企業および日本における顧客の新しい事業機会の創出・提供につながるよう、貢献していきたいと考えています。
Univers Japan は、少子化という中長期的な国家課題を抱え、2050 年のカーボンニュートラルをターゲットに設定している日本に、グローバルでさまざまな顧客が高い ROI(費用対効果)を実現している当社のソフトウェアソリューションを、それぞれの領域に対する専門的な産業知識を添えて提供していきます。
それにより、現在の日本社会が享受している利便性などを損なうことなく、日本が「ネットゼロ」というターゲットを無事に成就できるよう、全方位的にサポートしてまいります。
本年も皆様の一層のご指導・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。