2024年の年頭にあたり、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は年頭所感として、以下を発表した。

エンタープライズ生成AI元年、日本が直面する課題を解決

新年のスタートにあたり、ご挨拶申し上げます。

さて、2023年を振り返ると、生成AIが広く注目される1年でした。オラクル・コーポレーションの会長兼CTOであるラリー・エリソンは、2023年9月の「Oracle CloudWorld」で、オラクルがクラウド・サービスのポートフォリオに生成AIを含むAI技術を組み込み、お客様や社会全体が直面する課題解決を支援することを説明しました。

エリソンは基調講演で、「約1年前に生成AIは現れた。それは全てを変えている。オラクルも全てが変わりつつあるのは確かだ。」と訴え、医療、農業、ファースト・レスポンダーなどの分野でAIが課題解決を支援し、同時にオラクルがAIの進化を促進することを強調しました。

オラクルの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」は、超高速なRDMAネットワークとNVIDIA GPUを利用し、他のクラウドに比べて2倍速くかつ半分以下のコストで生成AIモデルをトレーニングできます。Cohere、NVIDIA、X.AIなどの生成AIを開発する企業がOCIを選ぶ理由は、この圧倒的な高コスト・パフォーマンスにあります。これらの企業はOCIを使用して大規模言語モデル(LLM)を開発しています。

オラクルは、クラウドネイティブなSaaSアプリケーションである「Oracle Fusion Cloud Applications」や「Oracle NetSuite」を提供しており、定期的なアップデートを行うことでAIを含む新しいテクノロジーを利用できるようにしています。これにより、セキュリティの強化とパフォーマンス向上が実現されるだけでなく、常に最新のAI技術がビジネス・プロセスに組み込まれます。従業員のエクスペリエンス向上を目指し、経営・財務報告の文書から原材料や品目、サプライヤーに関する文書、職務記述書まで、実用的なユースケースを提供することが可能になります。

オラクルは、少ないパラメーター数で高性能な基盤モデルをエンタープライズ向けに提供するCohereと提携し、エンタープライズ向け生成AIの開発に取り組んでいます。具体的には、「OCI Generative AI Service」を提供し、ビジネス・プロセスの自動化や意思決定の迅速化、顧客体験の向上を支援します。

このサービスは、オラクルのSaaSアプリケーション全体に組み込まれ、例えば「Oracle Fusion Cloud Applications」や「Oracle NetSuite」、「Oracle Cerner」といった業界向けアプリケーションでも生成AIの機能が活用されます。また、「Oracle Database」、「Oracle MySQL HeatWave」などにも組み込んでいきます。

「Oracle Database 23c」には、文書、画像、およびその他の非構造化ファイルに関する意味情報をベクトルとして保存、検索する機能として「AI Vector Search」が追加されます。この機能により、さまざまな生成AIのユーザーは、LLMと企業内の基幹システムに存在する業務データを組み合わせて、検索拡張生成(RAG)という、より回答精度を高める手法を、より高速に実行できるようになります。また、「AI Vector Search」は、「Oracle APEX」などの開発ツールに生成AI機能を追加することで、開発者の生産性を向上させることも可能です。

2023年11月からは、日本国内のユーザー向けに期間限定の無償資格取得プログラム「Race to Certification」を展開し、AIを含むOCIやデータ管理を使用したソリューションの設計と実装に役立つスキル習得により、エンジニアのリスキリングを支援していきます。

オラクルは、これらの取り組みを通じて、エンタープライズ向け生成AIの発展をリードする一方で、日本のユーザーやビジネスのニーズに対応するクラウドとAIの活用を推進しています。

多くの日本企業が直面する課題の1つは、業務の効率化が困難なレガシー・システムです。新しいビジネスモデルや環境の変化、セキュリティ・リスクへの対応など、これらの要因から、レガシー・システムのバージョンアップが必要になる状況です。日本のIT環境では、基幹システムの更新が約5~7年ごとに行われ、かなりのコストがかかっています。

この問題を解決するために、オラクルはクラウド・テクノロジーによるレガシー・モダナイゼーションを提案しています。これにより、大幅なアップグレード・コストを抑えつつ、その節約分を技術者の育成やデータの整備に活用できます。

また、今後の5年から10年間に予想される技術の進化にも十分留意すべきです。特に、生成AIがエンタープライズITの技術進化を主導する大きな要因になると考えられています。システムのモダナイズを行わずに技術の進歩に追従できない場合、大きな技術的負債が蓄積され、それが深刻な格差を生み出す可能性があります。

日本におけるレガシー・モダナイゼーションを支援するため、OCIでは分散クラウド戦略を推進しており、その中心的な役割を担うのが専用クラウド・ソリューションです。その代表的なお客様が、2020年に「OCI Dedicated Region」を導入頂いてから、高度でミッション・クリティカルな金融サービス基盤をOCI上で稼働する野村総合研究所(NRI)様です。

同社は、システムのモダナイゼーションに加えて、コンテナ技術、「Oracle APEX」、ブロックチェーンなど、OCIのクラウドネイティブなサービスも活用し、アプリケーションのモダナイゼーションや新たなサービスも展開しています。OCIの専用クラウドでの成功のもと、昨年、世界で最初に「Oracle Alloy」も採用いただいています。NRI様とこの先駆的な取り組みを起点として、日本オラクルは、パートナー・エコシステムを強化し、日本のお客様のITモダナイゼーションをさらに推進していく方針です。

デジタル庁が整備する、政府・自治体システムのモダナイゼーションを目的とした取り組みであるガバメントクラウドの推進にも注力しています。株式会社ジーシーシー様、株式会社 RKKCS様、株式会社両備システムズ様などのパートナーと連携し、この取り組みを進めています。単なるクラウド提供だけでなく、政府・地方公共団体の職員や地方自治体を支援するパートナーのためのリスキリングや人材育成プログラムを日本国内で展開しています。

また、OCIのコスト・パフォーマンスとセキュリティに加え、ミッション・クリティカル・システムでの実績を活かし、デジタル庁をはじめとする日本全体の取り組みに貢献していく意向です。

2023年6月からスタートした2024年度の日本オラクルの事業戦略は、「日本のためのクラウドを提供」と「お客様のためのAIを推進」の2つの方針を掲げています。これらの方針の根底には、2020年12月の社長就任以来取り組んできた日本市場でのレガシー・システムのモダナイゼーションと、将来の5~10年後の技術進化を見据えることが不可欠である、という考えがあります。

2024年には、オラクルの広範で統合されたクラウド・サービスに加えて、エンタープライズ向けの最高水準のセキュリティ、パフォーマンス、効率性を持つAIを提供します。これにより、お客様の課題を迅速に解決し、持続的な成長を支援する「TRUSTED TECHNOLOGY ADVISOR」としての役割を果たしていきます。