今は変化の時代であり若者の時代!
─ 未来へ向かって、いろいろな試みが登場しそうです。三菱総合研究所理事長の小宮山宏さん、技術革新がどんどん進む中で人とテクノロジーの関係をどう考えますか。
小宮山 わたしが心配しているのは生成AIです。米国では大企業がポジティブにどんどん生成AIを活用していますが、ある統計では、日本は72%の企業が導入にリラクタント(気乗りしない)というデータが出ています。
でも一度、使ってみたら便利だし、良さが分かりますよ。例えば、この人について知りたいと言うと、今まではインターネットで検索したり、人名録で調べなければいけなかったのが、チャットGPTなら瞬時に教えてくれて、普通の検索よりもずっと便利になってくる。
さらに、マルチモーダル化(複数の形式や手段を組み合わせること)といって、テキストや画像、音声、動画など、複数の種類のデータを一度に処理できるAI技術の開発が進んで、いろいろな知識をくっつけるようになって、AIと人間をつなぐヒューマン・インターフェイスになってくると思います。
─ 非常に便利なテクノロジーだということですね。
小宮山 一方で頼りすぎると人間はバカになる。まだ大人はいいですが、子供や若い人がこれに頼りすぎると訓練されなくなってしまうので、教育の場では慎重に扱わないといけない。
もう1つは、格差を拡大する可能性が極めて高い。だから、規制をきちんと作って、皆のためになるようにルールを作っていくことが必要です。
3つ目は、人間と社会が変化のスピードに付いて行けなくて、壊れてしまう可能性がある。これに注意しないと、人間のゲノムは40億年の歴史を刻んできたものなのに、チャットGPTが一瞬で変えてしまうかもしれない。ここのルール形成もとても重要だと思います。
─ それと、これから次代を担う若者の人たちへのメッセージがあるとすれば何ですか。
小宮山 まだ希望はある、だけど希望を実現するのは君たちだ、ということ。私も一緒にやりますが。今は変化の時代ですから、若者の時代なんです。日本独特の圧力もあるけど、助太刀しようという力もものすごく涌いてきています。
深澤さんが品川に皆が集まるような場を作ると仰っていましたが、三井不動産が千葉・柏を再開発した時も、一角にインキュベーション施設を入れているし、今度、プラチナ構想ネットワークでは秋田でイオンや地元の大学などを巻き込んで、若者が集まるプラットフォームを作ろうと考えています。
若者を鼓舞する未来の街づくりが全国で起きているので、若い人がこういうところに参加してくれるといいと思っています。