日本再生の鍵は民間の投資 新しいアニマルスピリッツを!
─ 経済同友会代表幹事に就任した新浪剛史さん、日本の環境をどう分析しますか。
新浪 日本が長期停滞に陥ったのは設備や人材へ投資するよりも、資金を保有し続ける方が有利なデフレが続いてきたためです。挑戦やそれに伴う痛みを回避してきた結果、現状維持病が蔓延し、構造的な問題の解決が先送りされ続けてきたのです。
しかし、いま海外発のインフレの進展、人手不足などによる需給ギャップの解消と日本を取り巻く環境は大きく変わっています。政府主導で需要を生み出す経済から、企業の投資で供給サイドを強化する民主導の経済へと転換すべき時です。
企業が新しいアニマルスピリッツを呼び覚まし、ヒト・モノ・カネ・データなどのリソースを動かすことで、新たな事業やイノベーションを創出していかなければなりません。
─ そのために、国、企業、個人に求められることは。
新浪 日本再生の鍵は民間の投資です。デフレからインフレに変わる中、現状維持はリスクです。民間がダイナミズムを取り戻し、経済を活性化させなければ成長はあり得ません。
ただ、今の日本は誰もが経済的な豊かさをひたすら追求していた時代とは違います。価値観が多様化し、社会課題は複雑になっています。一方で公的債務残高は膨大な額となり、これ以上、公助に頼るのは難しい。
私は「共助資本主義」と呼んでいますが、企業がNPOなどと連携し、民主導で課題解決と経済成長を同時に実現し、公助のみではなく、企業が社会からの信頼を得るような経済社会を目指していくべきだと思います。
デフレの下で罹ってしまった現状維持病を乗り越え、世界にまだない共助が支える社会に向けて踏み出す。それにはエコノミックアニマルとは一線を画した挑戦心、つまり新しいアニマルスピリッツが必要なのです。
具体的には、民間の投資を促進する規制改革が国には求められますし、企業は社会益に適う事業の追求が必要です。個人には成長分野への転職や時代が要請するスキル獲得に挑戦し続けることが大事になるでしょう。
─ 人材の活性化に向けてどんな政策提言を行いますか。
新浪 人材こそが変革の担い手であり、現状を変える鍵です。経済同友会は日本リスキリングコンソーシアムと連携し、全ての人がキャリアオーナーシップをもって学び続けることができるよう取り組みを始めました。
「生涯現役」を目指して、キャリアデザインとそれに伴うリスキリングを進めることにより、人材の流動化を目指す。企業は賃金を継続的に引き上げ、イノベーションを促進させることにより、効果的かつ持続的な生産性の向上に結び付けていくべきです。