通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける売れるネット広告社はこのほど、「『D2Cの会』フォーラム2023」を開催した。オルビスややずやなど、通販・D2Cを運営する企業の社長・担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。第4回は、化粧品・健康食品通販のアイムの丸山敦史執行役員、アートワークスタジオの荒西敏和社長、ユナイテッドスクエアの渡邉浩一郎社長の3人のセッションを取り上げる。モデレーターはピアラの飛鳥貴雄社長が務めた。
<ファネルへの意識>
飛鳥:2018年ごろからCPC(広告のクリック単価)は上がり続けている。景品表示法や薬機法などによる規制も厳しくなり、初めての顧客接点の単価は上がっている。今後、CPAも上がっていくことは目に見えている状況だ。ファネル(顧客の接点から成約までの絞り込み)について、より深く考えていくことが必須になってくる。そもそもファネルについてどう考えているか?
丸山:テレビCMも含めて認知をどう広げていくかが課題だと思っている。当社は現在、ミドルファネルへのアプローチにもチャレンジしている状況だ。
荒西:過去にはファネルを意識することなく、販売促進に近い行為だけで売り上げを伸ばすこともできた。しかし、その手法だけでは顧客獲得は難しくなってきている。ファネルを強く意識しなければ、ビジネスは成り立たないというのが、最近の事情ではないか。
渡邉:われわれ広告代理店の立場では、トップファネルで認知をどれだけ取るかという点を意識してきた。D2Cの場合、ボトム(購入に近い段階)でいかに刈り取り、ミドルも含めていかに商品認知から理解、購入へとつなげていくか、そこをうまくやらなければなかなかブランドが育たないと思っている。
<CMで重視する点>
飛鳥:CMの作り手としては、どのようなファネルを意識しているか。また、CM放映時に重視している指標は何か?
荒西:シンプルな指標だが、アクセス数がケタ違いに伸びれば、それに伴って注文も伸びる。流入の拡大をCM施策の効果として測定してきた。
丸山:刈り取り型広告のみのときの認知度は10%に満たない水準だったが、CMを放映することで必然的に認知が広まり、認知度は20%近くまで上がった。一定の効果は、この指標で担保できると捉えている。
渡邉:CMを開始してから、指名検索がどれほど上がるかという点が、分かりやすい最初の指標としてある。また、NPS(顧客のロイヤルティーを測る指標)を毎回チェックして、売り上げとの相関を見ていくことも重要だ。
飛鳥:ブランディングと刈り取り型広告の関係はどう考えているか?
丸山:当社では現在、試行錯誤している状況だ。CM放映すれば検索数は上がるが、ミドルも含めて複合的に考えていく必要があるだろう。
荒西:CMを作る際にこだわったことが、ウェブ上への露出が可能なタレントを起用することだ。
こうすることで、ウェブ上の販促もかなりうまくいったと理解している。
渡邉:たしかにCM制作の段階で、ウェブでの刈り取り型広告の素材の準備を進められることは効率的だ。ただし、インパクトがあるトップレベルのタレントを、ボトムまで起用できるかが難しい点でもある。