企業を支えているのは人!
─ キヤノン会長兼社長の御手洗冨士夫さん、この10年で一連の事業ポートフォリオ改革を進めてきましたね。これらの改革の手応えは?
御手洗 当社は約10年近い時間をかけ、事業の入れ替えを行ってきました。より成長力のある事業へ移行しようということでBtoC(消費者向け取引)からBtoB(企業間取引)への転換を進めると同時に、デジタル化、IT化といった技術革新の流れをとらえ、より付加価値の高い事業へのシフトを進めてきました。
具体的には、10年に商業印刷機の蘭オセ(現キヤノンプロダクションプリンティング)を買収したのに続き、15年にはネットワークカメラ(監視カメラ)のスウェーデン・アクシス、16年には医療機器の東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)を買収しました。
将来の市場成長が見込まれる医療分野やネットワークカメラ、商業印刷といった事業領域を拡大することで、持続的な成長を遂げるための布石を打ってきたわけです。今後はこの三つの分野を拡大させることによって、大きな成長を果たしたいと考えています。
─ 既存の技術と新しい技術の融合で、新たな事業を切り拓くということですね。
御手洗 そのとおりです。そのために、新たに事業を四つのグループにくくり直しました。これにより、徹底的に無駄をなくして効率的な運営をすると同時に、今まで以上に技術交流を進めてシナジー効果を発揮させ、新しい製品を生み出していきたいと考えています。
また、大きく事業転換を図る一方で、雇用は大事にしてきました。キヤノンには『人間尊重主義』と言って、絶対に人を犠牲にしてはいけないという精神があります。従って、当社が持つ人や設備といった経営のリソースを大切にしながら、新たに発展できる事業は何かということを考えて、事業ポートフォリオを変革してきたわけです。
─ これは、グローバルに経営を行う上でも有効ですか。
御手洗 そう考えています。結局、企業を支えているのは〝人〟ですから。
当社には『人間尊重主義』、『実力主義』、『健康第一主義』という企業精神があり、『三自の精神(自発・自治・自覚)』という行動形式がある。これらはいずれも、人をつくることが会社をつくることだという基本的な考え方です。これからも、キヤノンは人を大事にする経営を徹底していきます。