福井に行ったのに恐竜もカニもナシだったのでリベンジしてきました

2023年11月3日に、ドスパラ福井日之出店のオープニング取材で福井に行きました。福井といえば、世界三大恐竜博物館と言われる「福井県立恐竜博物館(以下、恐竜博物館)」があるところ。そして11月の福井の魅力といえば、日本最高級のズワイガニのブランド「越前ガニ」。

オタノシミはこれだ! ……と思ったのですが、越前ガニの漁解禁は11月6日。さらに時間的都合で、恐竜博物館にも行くことができませんでした(往復時間>滞在時間ではワリに合いませんし、野外恐竜博物館はすでに満員)。という事で、11月末に弾丸旅行で福井に行って両方を堪能してきました。

  • 福井の恐竜博物館に行ってきました

    福井に来たのに恐竜博物館に行けないなんて!と往復深夜バスという謎フットワークで行ってきました。当初は通常展示だけにする予定でしたが2023年7月にリニューアルに伴って追加された化石恐竜体験に行ったところ大興奮したというのが、今回の記事趣旨です。恐竜骨格展示も50と増えて、じっくり見ていたら一日コースでしょう

カニの方は、越前ガニを食べるほどお大尽ではないので、今回は2種類の卵がおいしいといわれるメスのセイコガニをランチで食べました(ランチとしては相当高いですが、セイコガニの原価が高いですから仕方ない)。

そのため恐竜博物館への到着は昼過ぎになりましたが、通常展示に加えてオプションの恐竜研究体験も行ったところ、これがサイコーに楽しかったのです(基本事前チケット購入ですが、当日空きがあれば追加購入可能)。

2023年5月のリニューアルで展示が強化された恐竜博物館

恐竜博物館は、2023年5月に新館を加えたリニューアルオープンを行い、展示が増えたほか、2つの追加体験オプションが加わりました。

1つは、勝山市北谷町の恐竜化石発掘現場の見学と化石発掘体験ができる「野外恐竜博物館」。こちらは11月5日で2023年の営業を終了しています(平日2回、土日祭日4回、夏休み期間は6回実施)。

もう1つが、新館3階に新設された化石恐竜体験(平日4回、土日祭日夏休みは5回、一回あたり最大24名)で、3つの実験室を巡っての化石研究体験を行うもので、今回体験したのはこちらの方。どちらも約2時間の所要時間がかかります。

野外恐竜博物館には、化石発掘体験という北谷の岩をタガネで割って鑑定をおこなうメニューがあります。

しかし秋から野外恐竜博物館がクローズする関係で、2023年11月10日~2024年4月中旬までは体験メニューの「T.rex頭骨復元」(グループで原寸大のティラノサウルスの頭骨パーツを組み立てる)が化石発掘プラスとなり、今回筆者が体験した化石恐竜体験は、化石発掘プラスと通年で実施している化石クリーニング/CT化石観察の計3パート構成になっています。

  • 化石恐竜体験の流れ

    化石恐竜体験はLab.1~3と三つのメニューで構成されており、一回最大24名ですが2班に分かれ、Lab1→2→3と巡る1班と、Lab1→3→2と巡る2班が1グループ4名で行動します

化石発掘体験プランを実際に楽しんできました

化石発掘プラスは、北谷で採れた化石入りの岩をハンマーとタガネを使って割り、含まれている化石を自分の目で鑑定するというもの。筆者は恐竜の研究者でもなければ、化石を実際に見つけて分類する事はないと思っていたので、これは楽しい。野外恐竜博物館の場合は屋外で作業を行うのですが、化石発掘プラスは屋内作業なので負担も軽そうな感じです。

  • 割り放題の化石入りの石

    Lab1の11月中旬~4月中旬のメニューが化石発掘プラス。これだけでもツアーの価値アリです。化石入りの石割り放題!

  • 化石入りの石

    適当に取った石。砂袋の上からハンマーとタガネで割って、化石を特定して分類する、というメニューです

実際に行ってみると、わかりやすい植物の化石ならば非常に多く見つかりますし、貝や骨らしきものも見つかりました。北谷の地層から化石がよく見つかるために、福井県から多くの新種の恐竜が見つかるという事がよく理解できます。

イベントで同じような作業をする事もあると思いますが「化石入りの岩を割り放題」というのは楽しい!

  • 作業に用いる大ハンマー

    写真に写っているのが大ハンマー。細かい作業のための小ハンマーも用意されています

  • 石の拡大像

    ライト付きルーペもあって、じっくりチェック可能です。もしやこれは?

  • 化石の分類

    上にあるのが化石のサンプルで自己チェックで分類します。植物が多いのはしょうがないですね

一方、化石の鑑定のためにタガネで割るというのは少々乱暴で、実際に化石を標本にする場合には、ある程度割った岩石から削り出す工程を行います。恐竜博物館でも本館内に化石クリーニング室というスペースがあり、ガラス越しにスタッフが化石を削り出している現場を見る事ができます。

そうして削り出した結果が、今年国立博物館で行われた「恐竜博 2023」で展示されていたようなスキピオニクスのホロタイプ標本のようになります。

筆者はスキピオニクスを先に見ていたので、「あの精密な削り出しを行うのは大変だぁ」と強く感じています(先の記事のスキピオニクスの写真ですが、全画面表示にして拡大すると細かく削り出されているのがわかります)。

化石が含まれている岩石から化石を掘り出すのが化石クリーニングで、体験では、専用のエアーツールを使って石から化石の周りの石を削っていく作業が行えます。まず練習として石を削る練習をしてから、北谷の恐竜化石発掘現場で見つかった最大級の獣脚類の歯のレプリカが埋まった「石」を削ります。先の化石発掘プラスでは化石の石を持ち帰ることができませんが、化石クリーニングでは持ち帰りもオッケーです(専用の紙箱も用意されています)。

  • 化石クリーニングの作業環境

    Lab2は化石クリーニング。目の前にあるのが専用ツールで、赤いホースの方が荒く削るもので、青いホースは細かい作業用となります。中央は排気になっていて、細かなカスは吸い取られます。左にあるのは削ったゴミ捨てスペース

  • 作業用の道具たち

    保護グローブと安全メガネ、刷毛はゴミ捨て用です。中央にあるのはエアーツールになれるための石

化石を石から全部掘り出すのか、それとも埋まった形で見せるのか、周りはどんなふうに削るかは人それぞれ。周りの石は白っぽく、レプリカの化石は黒いため削り出し作業は比較的簡単です。

  • 化石のレプリカ

    練習が終わったら化石のレプリカ(写真中央の黒いもの)が埋まった石(砂を固めた感じでした)を削っていきます。削った石はお土産で持って帰れます(専用の紙箱付)

  • 大人も真剣に作業中

    大人も真剣にやってます。手前のレバーはどちらのツールを使うかの切替となっています

続いて、岩石の中に化石が入っているかを非破壊で確認するのが、X線を用いたCTスキャン。病院で骨が折れた場合などでX線診断を受けた人がいると思いますが、CTスキャンの場合は3次元データとして断面を壊さずに見る事ができます。

CT化石観察は、グレースケールの変更機能やエリアの色付け機能を使って中に含まれている化石を特定するのを体験できます。さすがにCTスキャンを毎回行うのは時間も手間もかかるので、あらかじめ用意された12のサンプルのデータを使っていました。

  • CT化石観察の様子

    Lab3がCT化石観察。グループ毎にサンプルぽいものがあり、スキャンしまーすとプロジェクションマッピングしていますが、実際にはそんな短時間にはスキャンできませんのであくまでイメージ

  • 用意された12のサンプル

    12のサンプルが用意されました。これらを細かくチェックすることになります

  • 化石の輪切り画像

    よくあるレントゲンは透過映像ですが、CTスキャンなので輪切り映像が得られます。サーフェスレンダリングはその輪切り状態を見せてくれます

  • 骨のかけらを発見

    サンプルごとにお題が用意されており、見つかるとこのように表示されるので見つけることそのものは比較的容易

  • サーフェスレンダリング画像の様子

    サーフェスレンダリングでもしきい値を変える事でかなり見やすく表示可能です

  • 色付きのサーフェスレンダリング画像

    さらに部位ごとに色を変えたり透過させるセグメンテーションを行うと内側の構造が一目でわかるようになります

  • 部位ごとに色を変えた場合

    部位ごとに色を変える事で非常にわかりやすくなります。ちなみに所要時間2時間の中でラボを移動するため制限時間が用意されています。この画像だと右上にCOUNT DOWNと出ているのがそれ

  • 実際の研究ではどのようにしているのかちょっと気になりました

    実際の研究ではどのようにしているのかちょっと気になりました。次に行ったときに質問したいと思います

ということで、石の中に埋もれている化石を取り出すのは非常に大変であるという事がよく理解できました。今回は化石恐竜体験を体験するために通常展示をザっとしか見ていないので、来年の野外恐竜博物館が再開されたのちにまた行ってみようと思います。

  • 新館屋上の化石展示

    外からスロープ沿いに登れる新館屋上にも化石(レプリカ)を展示してました

  • アメリカ産の木の化石

    アメリカ産の木の化石。筆者はアリゾナ州にある「化石の森国立公園(Petrified Forest National Park)」に何度か行ってます。こちらは樹木がガッチリ岩にはまっているわけではないので、場所によって石化した樹木がゴロゴロしていて「森が呪いで石に変えられた」的イメージが味わっています

  • 展示しきれなものが並ぶ収蔵庫

    新館ができていろいろと増えたようです。展示しきれないものを並べる収蔵庫もガラス越しに見る事ができます

  • ティラノミムス・フクイエンシスの特別展示

    今年9月に福井県で6種類目の新種の恐竜として登録されたティラノミムス・フクイエンシスが特別展示されていました。「福井のティラノもどき」と聞いていたので大きいものだと思っていたら、ガラスケース1つに収まっており意外と小さい!

なお、運賃値上げが発表されたので今後の価格は不明ですが、えちぜん鉄道は恐竜博物館用交通セット券を発売しています。記事執筆時点では、「えちぜん鉄道1日フリーきっぷ&勝山市内バス乗り放題」で1500円。富山駅~勝山駅は片道770円、勝山駅~恐竜博物館のバスは片道300円なので、バスが実質無料になる上、どちらも1日券なので他の観光の用事がある場合にも有効です(値上げは2024年3月16日からで、福井~勝山の片道運賃は50円の値上げ予定です)。

  • 「えちぜん鉄道 勝山駅」に展示された日本最古の電気機関車テキ6形6号

    恐竜博物館の最寄り駅「えちぜん鉄道 勝山駅」には動態保存としては日本最古の電気機関車テキ6形6号が展示されていますので、テツにもいいかもしれません。駅舎もステキです

  • ト61型68号 無蓋貨車

    テキ6形6号が引いているのは、木造貨車として日本最古級のト61型68号 無蓋貨車

  • 今回セイコガニを食べた「らでん」

    今回セイコガニを食べたのは「らでん」。趣があってゆったりしたいお店ですが……

  • 頂いたランチ

    勝山行きの電車が時間2本なので(乗り遅れると恐竜博物館の時間指定に遅れてしまう)来店して20分で退店。ブランド蟹の証である黄色いプラスチックタグももらえました

  • メスのセイコガニシーズンは11~12月だけ

    メスのセイコガニシーズンは11~12月だけと短いので、各店セイコガニアピールしていましたが……

  • 冷凍品ならセイコガニを通年提供しているお店も

    冷凍品でいいなら通年提供しているお店もありました。なんで前回行ったときに気が付かなかったのだろう

最後に注意事項を。恐竜博物館に来館可能な人数に比べて、恐竜研究体験の定員は非常に少ないのですので、「絶対に行ける日と時間帯」が決まったならば早めの予約をオススメします(予約は60日前から可能なのでGWや夏休みはカレンダーに印をつけて予約しておくとよいかも)。