偏らない形で情報を取っていくことが重要
─ 国際社会経済研究所理事長の藤沢久美さん、いま世界ではいろいろな分断・分裂、戦争が起きていますが、これからの世界をシンクタンク代表としてどう見ますか。
藤沢 世界の分断的なことは各種起きてくると思いますが、わたしが心配しているのは、日本がどうしても米国寄りに物事を考えてしまうことです。
先日、アフリカに行って来たのですが、スタートアップも大規模なものに変わってきているし、国自体の気候変動に対する取り組みもかなり進んでいます。彼らと話していると、必ずしも米国的な考え方ではなく、ヨーロッパもうまく使ってお金を引っ張ってきていますし、ロシアに対するスタンスも、米国とは全然違うわけですね。
米国は重要な同盟国ではありますが、米国だけを見ながら行動を決めていると、日本は世界から置いていかれるのではないかと。日本本来の、どことでも上手に付き合うという気持ちを持ちながら、情報も偏らない形で取っていくことが重要だと思います。
─ それは大事な指摘ですね。偏った見方ではダメだと。
藤沢 ええ。例えば、ケニアは再生可能エネルギー90%で、30年までに100%にすると言っています。アフリカにとって鉱物はこれまで大きな輸出材料でしたが、脱炭素でこれから先進国が化石エネルギーを使わなくなることを見越して、新しい事業をつくらないといけないということで、彼らは真剣に未来を考えています。
そこで世界の知恵とお金を使うということになると、日本に期待しているとは言ってくれますが、日本は気候変動へのチャレンジも遅れていますし、果たして日本が期待に応えられるものがどれだけあるのか、不安を感じています。
─ それと藤沢さんは日本を代表する女性として活躍されていますが、女性の起業家育成についてはどう考えますか。
藤沢 ナイジェリアの銀行の頭取の大半が女性でした。子供を持つ女性経営者の割合を海外と比較すると、日本は遅れているどころか取り残されています。女性が活躍している国には、ベビーシッターやメイドの制度があります。
日本では男性も家庭に参加する「育メン」などと言っていますが、どちらかが家事育児を担当するという議論をしている限り、女性が本当に責任ある仕事に集中して取り組むことは不可能です。介護も含めて、親族等の無償労働に依存する仕組みではなく、外部に委託できる家事サービスを早急に用意して、誰もが利用できるような体制にしていくことが、一丁目一番地だと思っています。