【2024年をどう占う?】答える人 三井物産会長・安永竜夫

世界中で人材の適材適所を

 ─ 三井物産会長の安永竜夫さん、世界が混沌としているわけですが、日本の立ち位置をどのように見ていますか。

 安永 現在は地政学リスクが高まり、かつ不安定になっており、世界の目がウクライナに集中していると、イスラエルで戦争が勃発したりする。米国がこの2つの紛争で手一杯の時にどこか別の国で何かが起こると、それがまた新たな地雷原になっていくということで、リスクの誘発可能性は高まっています。

 このような状況下ですが、わたしは、日本が果たすべき役割は相対的に大きくなっていると感じています。例えば、世界が中国に対して警戒感を強めるほど、国際社会における日本への期待は増しています。経済安全保障の問題もそうですし、G7(主要7カ国)におけるプレゼンスも同様です。

 先の見えない不透明な時代だからこそ、相互理解を継続的に深めて新たな価値を生み出していかないと、日本は再び眠りにつくと思います。これだけのオポチュニティがある時に次の時代を見据えて、先頭に立って主体的に動くことが求められます。

 ─ 当事者意識をもって自ら動かなければならないと。これは商社の仕事も同じですね。

 安永 はい。われわれはもはや日本人だけで、会社の仕事を回すのは無理だと考えています。年齢や国籍、ジェンダー等の垣根をなくして、多様性のある経営をしなければならない。お題目で言っているのではなく、それを進めることで仕事がスムーズに動く、ということを示していくことが、われわれの生き様だと思っています。

 世界中で仕事をしている中で、日本人だけでできることは本当に限られています。現地の人材と第三国のエキスパートを投入して、事業に取り組んでいくべきです。インド三井物産がその典型で、総代表は日本人、社長はインド人、副社長は韓国人というトロイカ体制で、彼らが現地で議論して、自分たちが正しいと思う方向に進んでいます。

 三井物産の強みは、それぞれの国に特化した人たちが、その国のためになる仕事をつくることです。各地域に権限を委譲して、現地で仕事をつくり、必要があれば東京から応援に行くし、資金的な支援もする。基本的には現地で仕事をつくり、現地でマネジメントせよというやり方を実践していますので、それがより生きてくる時代になったのではないかと思います。

 ─ それぞれの国や地域にあった経営が求められると。

 安永 はい。繰り返しですが現在の世界情勢は、視界不良です。明日何が起こるか分からない時代になっており、何が起こっても対応できるだけの瞬発力のある組織でないといけない。その為にも、三井物産は年齢や国籍、ジェンダー等を問わず、人材の適材適所を世界中で起こして行こうと考えています。