アライアンスを活用しながら…
四半世紀を経て名実ともに〝対等な関係〟になった日産自動車と仏ルノー。三菱自動車を加えたアライアンスは新たなステージを迎えることになる。
「電動化をはじめとする事業戦略を支える取り組みで、新たな成長機会を追求することが可能になる」─。日産社長兼CEOの内田誠氏は語る。
これまでルノーは日産に43%を出資する筆頭株主だったが、2023年11月にはルノーが日産への出資比率を15%に引き下げ、相互に15%ずつを出資する形となった。その際、ルノーは日産株28%を仏の信託会社に移していたが、そのうちの5%分を日産が買い取った。
これに伴って日産の戦略にも変化がみられるようになる。これまでは日産が日本・北米・中国を、ルノーが欧州を、三菱自が東南アジアを主力市場として3社で棲み分け、車台の共同開発や部品の共同調達などのスケールメリットを追求してきた。
しかし、今回実現した対等な資本関係によって「経営の自由度は増した」(関係者)形となった日産はルノーの主力市場である英国のサンダーランド工場に追加投資を表明。計5600億円を投じて同工場を電気自動車(EV)の拠点にする構えだ。
同工場は日産の中でも42万〜45万台という年間生産能力を誇る主力工場。EV「リーフ」のほか、多目的スポーツ車(SUV)の「ジューク」と「キャシュカイ」を生産し、今後は各車種の新型EVも生産する。
また、日産はルノーが設立したEV新会社のアンペアにも1000億円規模を出資。アンペアはルノーのEVに加えて、日産向けの小型車「マイクラ」のEVを生産するが、日産は「価格競争が激しく利益の上げにくい小型EV」(同)はルノーと生産で連携し、SUVなどの中型EVは自社開発を進める。
自由度が増したということは「逆に言えば、自力で米テスラや欧州メーカーなどに対抗するEVが出せるかどうかが問われる」(アナリスト)ことにもなる。足元では、日産の主力市場の1つである中国では苦戦が続く。アライアンスを活用しながらもキラリと光る日産独自の戦略を打ち出せるかが生き残りの鍵になる。