日本各地で半導体工場の建設が進む昨今、その中心地の1つとなっている九州では、半導体産業に関わる人材不足が懸念されるようになっており、新たな人材の育成が急務とされている。そうした課題を踏まえ12月25日、台湾の明新科技大学の学長らが福岡工業大学(福岡工大)を訪問、両大学間での学生・教員の人材交流を進めながら、福岡工大の学生が台湾にて半導体技術を学ぶことでグローバル人材の育成を目指す連携に向けた覚書を締結したことを発表した。
明新科技大学は台湾北部、多くの半導体のトップ企業が入居する台湾のシリコンバレーこと「新竹サイエンスパーク」近くにあり、2021年に台湾初の「半導体学部」を設立したことで知られている。特に半導体の製造工程で「後工程」と呼ばれる組み立てや試験・検査に特化した人材の育成に焦点を当てており、学内には台湾政府や企業から支援を受けて、実際に企業が使用するものと同じ最先端の半導体製造ラインも備えている。また、半導体製造にかかわるエンジニアのライセンスである「半導体検測工程鑑定士」の試験を台湾政府や企業とともに実施するなど本格的に半導体に特化した人材育成を行っている。
九州における半導体やその関連産業に関わる人材育成などを目指す産官学組織「九州半導体人材育成等コンソーシアム」によると、九州の半導体産業における人材不足は、今後10年間で毎年1,000人程度になると見込まれ、特に生産技術職にかかわる人員は不足感が大きくなると予想されている。福岡工大では今後、明新科技大学との間で交換留学などの制度を作っていき、半導体製造の本場である台湾で学んだ技術を九州の生産現場で生かすことができる中核人材を育てていくとしている。
台湾半導体企業にとっての課題、日本で働く気のある台湾人技術者の確保
日本に進出する台湾の半導体メーカーおよび関連企業においても、人材確保は重要な課題になっている。特に、台湾の大学で学んだ学生は台湾域内での就職を望む傾向が強く、日本で活躍する人材の不足感は台湾メーカーで強くなっているという。そのため、そうした半導体メーカーからのニーズを受けて、明新科技大学でも日本からの留学生を大学で受け入れて育てる必要性が高まっており、現在日本からの留学生を受け入れる新たなプログラム(いわゆる「日本人コース」)を検討中であるという。同大の教育制度を利用している日本の大学は現時点ではまだなく、福岡工大は今後、同校と協議を進めながら台湾企業でのインターンシップなどを含む新しい教育カリキュラムの構築などを進めていきたいとしている。