資本金1億円超の大企業に課す外形標準課税の見直しが2024年度税制改正の焦点の一つになっている。資本金を意図的に減らす「課税逃れ」を防ぐため、総務省は新たな基準の導入を目指しているが、経済界は反発しており、調整は最後まで難航しそうだ。
同省の地方財政審議会は11月、資本金と資本剰余金の合計が一定額を超えた場合も対象にするよう提言。税負担の公平性を確保し、自治体の税収に影響が出ないようにするためだ。
外形標準課税は、都道府県が企業に課す法人事業税の一部で04年度に導入された。利益ではなく、従業員の賃金や資本金など企業の規模に応じて課税する方式で、赤字企業も納税する必要がある。景気の動向に左右されないため、自治体は安定した税収を見込める。
課税対象となる企業は06年度の約3万社をピークに、21年度は約2万社まで減少。総務省によると、資本金を資本剰余金に振り替えて減資することで課税対象外となるケースが多い。
政府・与党は、資本金は1億円以下でも、資本金と資本剰余金の合計が50億円を超えれば対象とする新たな基準案を検討。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は「大企業が減資して中小企業になっている事態は相当問題だ」と述べ、対策の必要性を訴えた。
ただ、この案には中小企業も対象に含まれる恐れがあるとして、業界団体の支援を受ける議員が反発。西村康稔経済産業相も「一般の中小企業やスタートアップに影響が及ぶ見直し案は望ましくない」とくぎを刺した。
これに対し、鈴木淳司総務相(当時)は「外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人を対象に制度の見直しを検討するものであり、地域の中小企業を対象とするものではない」と強調。政府・与党は、中小企業への影響に配慮し、実質的に大規模な企業を対象範囲にする方向で慎重に検討を進めている。