佐賀県鹿島市の養鶏場で11月25日に高病原性鳥インフルエンザの感染が確認されたのを皮切りに、今シーズンも鳥インフル流行の兆しが出てきた。過去最悪の1771万羽が殺処分された昨シーズンに比べると出足は遅いが、鶏卵の供給不足により価格が高騰した「エッグショック」の再来を防ぐことができるかが問われている。
昨シーズンは、昨年(2022年)10月28日に初感染が確認され、全国26道県に広がった。鶏卵の卸売り大手JA全農たまごによると、1キロ当たりの平均基準値(東京地区、Mサイズ)は4、5月に350円と過去最高水準に跳ね上がった。その後、6月に鳥インフル収束の宣言が国際機関から認められ、鶏卵価格は需要が減退する夏ごろから低下基調となった。
11月10日までに、昨シーズン鳥インフルが発生した61の採卵鶏農場のうち49で経営を再開し、殺処分対象の62%に当たる1028万羽のひなが再導入された。このため需給の逼迫は緩和されており、今シーズンの国内初感染の確認に際して、宮下一郎農林水産相(当時)は「国内の鶏卵の需給や価格への影響は今のところ限定的だ」との認識を示した。
農水省がエッグショック回避の切り札として期待するのが、作業者や機材を共有せずに複数の鶏舎ごとに厳密に養鶏場を区分けする「分割管理」だ。家畜伝染病予防法では、一羽でも感染が確認されれば同じ養鶏場の全羽が殺処分の対象となるが、別々の農場として扱うことで殺処分を抑えることができる。
農水省は9月に分割管理のマニュアルを策定し、養鶏場に活用を促す。先に成立した2023年度補正予算には、導入費用の支援も盛り込んだ。ただ「コストと手間がかかる話なので、どこでも取り組めるというものではない」(宮下農相)のも事実。本格的な流行の前に、分割管理などの対策を浸透させることができるか、時間との闘いになってきた。