「レカネマブ」が保険適用 エーザイの認知症薬は次のステージへ

年間費用は298万円

「アルツハイマー病の患者やその家族などの真の気持ちを知ることで当社への期待感を強く感じた。このエンパシー(共感)で『認知症が治る』という同じ未来を見ている」─。エーザイCEOの内藤晴夫氏は語る。

エーザイの認知症薬「レカネマブ」が米で正式承認 普及に向けた体制づくりが課題

 同社が米バイオジェンと共同開発した認知症治療薬「レカネマブ」について、中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)が保険適用する薬価(薬の公定価格)を承認。体重が50キロの人の場合、年間費用は298万円になる見込みだ。既に承認されている米国では、レカネマブの年間費用は円換算で約390万円だった。

 薬価を巡っては反応は様々だ。ヘルスケアに詳しい専門家は「世界にない画期的な新薬は1億円のものもある。もっと高額になっても良かったのでは」と語る一方で、「認知症患者やその家族の介護負担が軽減される」といった医療機関関係者もいる。

 薬価が高額になった際には、患者の年齢や所得に応じて自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」が適用されるが、残りは医療保険の運営主体(保険者)が負担することになる。財源は加入者が払う保険料と公費だ。

 エーザイは国内の投与対象者はピーク時で3万2000人と想定。売上高は980億円程度を見込む。そのため内藤氏は「保険財政を大きく圧迫するとは認識していない」との見方を示す。

 一方で、薬価に有用性が十分に反映されていないとして、「薬価基準そのものに不服申し立てを行っている」とも強調し、「新たな薬価算定の仕組みが進むことを期待している」とも述べる。

 いずれにしても、認知症の進行を抑制する新薬が日本でも普及すれば介護費用の抑制にもつながる。育薬のステージに進むエーザイの役割は大きくなる。