ASMLは12月22日(欧州時間)、高NA EUV露光装置のプロトタイム初号機を当初の予定どおりにIntelに向けて出荷したことをX(旧Twitter)にて明らかにした。

Intelが10月23日(米国時間)に、米国オレゴン州ヒルズボロにあるIntelゴードン・ムーア・パークの最先端半導体技術開発・試作施設である「D1Xファブ」に、世界初となる高NA EUV露光装置のプロトタイプを2023年末までに導入すると発表していたが、それが実際にスケジュール通りにASMLより出荷されたこととなる。

ASMLはX上にクリスマスラッピングを模した赤いリボンがまかれた装置輸送用のコンテナの画像とともに、「Intelに初の高NA EUV露光装置を出荷できることに興奮しており、誇りに思う」とのコメントを投稿。Intel側も、同社の公式X上にて、この投稿を引用する形で、「これは私たちの欲しいものリストの一番上にありました! 最初の高NA EUV露光装置を受け入れることは、半導体製造を加速する上で極めて重要なステップです。私たちと一緒にこの旅を続けてくれてありがとう」とコメントを投稿しているほか、Inetl Newsの公式Xでも「『ムーアの法則』を前進させる高NA EUV露光技術の実用化が待ち遠しい」と高NA EUV露光装置を歓迎するコメントを投稿している。

高NA EUV露光装置を他社に先駆けて入手したIntel

Intelが今回入手したのは、研究開発・試作用高NA EUV露光装置「EXE:5000」(NA=0,55)の初号機となる。これまで初号機はベルギーimecに出荷され、世界中のimecに参加するメンバーカンパニー(Intel、TSMC、Samsung、SK hynix、キオクシアなど)にその後、供給される流れであったが、今回はIntelに初号機が出荷されることとなった。

2023年5月にベルギーでimecの関係者に話を聞いた際、このプロトタイプ初号機の導入を巡ってIntelとimecが競い合ったことをほのめかす発言をしており、Intelに先を越されたことを悔しがる声を聞こえてきた。裏を返せば、Intelがあらゆる手を尽くして、いかに他社にさきがけて高NA EUV露光装置を導入しようと動いていたかがうかがえるということである。

Intelのプロセス微細化は立て続けてトラブルに見舞われてきた結果、TSMCにもSamsungにも(コマーシャル的な数値の部分がメインとなるが)後れを取ってきた。NA=0.33の従来型EUV露光装置の量産導入も大幅に遅れることとなった。

今回の高NA EUV露光装置の他社に先駆けての導入は、そうしたプロセス微細化の遅れを一気に取り戻し、競合に追い付き追い越すことを目指した意欲の表れとみられる。もっとも、EXE:5000は、研究開発および試作用であって量産用ではないため、2025/2026年に出荷予定の量産向けとなる「EXE:5200」よりも解像度とスループットの点で劣るので、これを量産ラインにそのまま持ち込めるわけではない。

まずは、EXE:5000で高NA EUV露光装置を使い慣れて、2nm超の超微細プロセス・デバイス開発を先行させ、2025/2026年以降の量産に備える構えのようで、すでに量産に向けて、Intelでは、EXE:5200に対する発注も他社に先駆けて公表している。

なおASMLは現在、imecと共同でオランダのASML本社隣接地に「High-NA EUV Lab」を設置し、東京エレクトロン(TEL)やJSRといった日本企業を含めた複数の装置・材料パートナーとともに2nm以降のパターニングプロセスの開発を行っており、ASMLの顧客は、同Lab内に設置されている実験機(EXE:5000の初期の試作機)にアクセスできる状況にあるという。

  • ASMLのEUV露光装置ロードマップ

    ASMLのEUV露光装置ロードマップ (出所:ASML)