矢野経済研究所が12月20日に発表した調査結果によると、2022年度の国内社会インフラIT市場規模は2021年度と比べて5.4%増の6424億円であり、2023年度は反動でやや縮小するものの、2024年度には100億円規模を突破するという。
2020年度と2021年度の同市場は通年でコロナ禍(新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大)の影響があり、社会インフラIT案件の延期・停止もあり、減少で推移したとのこと。
分野別では、特に鉄道や防災/警察分野での落ち込みが大きく、両分野で2019年度と比べ約300億円縮小したという。
2022年度は一転して拡大に転じ、2022年度の社会インフラIT市場規模(国や自治体、インフラ運営事業者の発注金額ベース)は2021年度と比べて5.4%増の6424億円となった。 要因としては、鉄道、空港、水関連(上水道、簡易水道、下水道、浄水場、排水処理、農業用水など)の各分野における社会インフラITへの投資拡大を同社は挙げる。
分野別に見ると、現在の社会インフラIT市場は、ほぼ従来型(レガシー・タイプ)の社会インフラITが大部分を占めているという。
2010年代に入ってからは、NEXCOグループや首都高速、阪神高速などの高速道路事業者、JRの旅客事業者(JR東日本・東海・西日本など)や東京メトロ、首都圏の私鉄大手といった大企業を中心に、デジタル技術を使った設備点検や遠隔監視、状態診断などを行うようになったとのこと。
さらに2010年代後半からは、国土交通省もインフラ保全業務での技術活用を推奨する流れになっているといい、IoTやクラウド、5G(第5世代移動通信システム)/ローカル5G、LPWA(Low Power Wide Area)、AI(人工知能、画像解析・音声認識・データ解析など)、3D、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)スマート・デバイス、センサー・ネットワーク、ドローン、ロボットといったテクノロジーの実装が始まっているという。
これらのテクノロジーを活用した社会インフラ向けITソリューションは、2020年代に入ってから実装が進んでおり、社会インフラ向けITソリューション市場(国や自治体、インフラ運営事業者の発注金額ベース、社会インフラIT市場の内数)は2024年度には100億円規模を突破して、本格的な普及期に入ると同社は予測する。
背景には、IT技術の進展及びシステムの低廉化に加えて、現場での技術者不足や高齢化、残業規制の適用といった社会情勢の変化も影響しているとのことだ。
2023年度の社会インフラIT市場規模は2022年度の反動もあり、前年度比1.7%減の6315億円となるマイナス成長を同社は見込んでいる。
2023年度も依然として従来型(レガシー・タイプ)の社会インフラITが市場のほとんどを占めているといい、デジタル技術を使った社会インフラ向けITソリューション比率は1.2%ほどに留まるという。社会インフラ向けITソリューション市場は、2024年度には100億円規模を突破して、本格的な普及期に入るとの見通しを同社は示す。
今後、社会インフラ向けITソリューションは、5G/ローカル5G、920MHz帯(LPWA)やセルラー系LPWAといったネットワーク、さらにWi-Fi HaLowや6Gのような次世代型通信規格の登場も見込まれることから、新たなソリューションが創出される蓋然性は高いという。
加えて、衛星(画像系やレーダー系での利用など)やドローン(防災用途やインフラ構造物点検・監視など)、ロボット(点検や危険箇所作業支援など)の利用も拡大すると、同社は考えている。