日本電信電話(以下、NTT)グループは12月20日、GX(グリーントランスフォーメーション:社会のカーボンニュートラルと経済成長の両立を目指す変革)ソリューションを展開する新たなブランドとして「NTT G×Inno(エヌティティ ジーノ)」を立ち上げたことを発表した。
ブランド名称は、社会へのソリューション提供を通じてGX分野でイノベーションを起こすべく、「GX(Green Transformation)」と「Innovation」を組み合わせたもの。2050年のカーボンニュートラル実現に貢献するという熱意を表している。
NTTがGXソリューションを展開する新ブランド「NTT G×Inno」
今回発表したNTT G×Innoのビジョンは、「産業の活動も、地域の生活も、自然環境と共に発展できる世界へ」。また、「NTTグループとパートナーの技術やソリューションで、社会のカーボンニュートラルと経済成長の両立を実現します」をブランドのミッションとしている。
NTTグループが開発を続けるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は低消費電力を特徴の一つとしているが、こうした技術を使って自社のカーボンニュートラルも推進するとのことだ。
新ブランドでは、NTTグループが保有する技術やノウハウとパートナー企業の技術を組み合わせて、コンサルティング、可視化や省エネを実現するソリューション、再エネの利用を促すソリューションなどを広く展開する。これらのソリューションは、発電事業者から小売電気事業者、自治体に加えて、個人にも提供していくそうだ。
NTTの技術企画部門で統括部長を務める大許賢一氏は新ブランドの展望について、「2030年度には1兆円超規模の事業へと成長させたい。そのためにも、これからソリューションと人材を拡充するとともに、多様なパートナーとの連携も強めていく」と紹介した。
グリーン発電事業統合プラットフォームを提供開始
NTTコムウェアは12月20日から、太陽光や風力発電のデータを統合的に管理し分析活用するグリーン発電事業統合プラットフォーム「Smart Data Fusion」を国内の再生可能エネルギー発電事業者向けに提供を開始する。
このプラットフォームは再生可能エネルギー発電設備を運営するNTTアノードエナジーのデータをもとにNTTコムウェアが開発したソリューションで、「期待発電量推定」や「異常早期検知」などのデータ活用モデルを搭載する。2023年4月からアノードエナジーでの活用を開始しており、今回外部向けに提供を開始する。
NTTアノードエナジーで運用した結果、発電運営管理のための日々のチェック業務を70%程度削減できただけでなく、発電量予測のような推定モデルを用いた異常検知により発電ロスを防ぎ、収益性の向上も実現できたそうだ。
Smart Data Fusionは、風力や太陽光といった電源種別や、規模、設備、系統容量などに応じたさまざまな条件の発電所データを集約して統合する。発電所ごとに異なる条件に応じたAI分析も可能だという。ダッシュボード機能を備えるため、事業全体のデータを一覧で可視化も可能だ。
アグリゲーション事業推進に向けたプラットフォームを構築
NTTアノードエナジーは再生可能エネルギー導入の促進や電力需給の安定化に貢献するため、アグリゲーション事業の推進に向けたエネルギー流通プラットフォームの構築を開始している。
「再エネアグリゲーション」「調整力アグリゲーション」「需要アグリゲーション」の3種を軸とし、それらを支える制御基盤として「エネルギー流通プラットフォーム」を構築するとのことだ。
アグリゲーションとは、蓄電池の活用や需要家側のエネルギーリソース制御、再生可能エネルギーの集約によって電力需給を最適化するための取り組み。再生可能エネルギーの発電量は気象条件などに依存して変動するため、火力発電に依存しないエネルギー利用に向けて注目されている役割だ。
再エネアグリゲーションでは、フィードインプレミアム制度(FIP)下での再生可能エネルギーの普及促進や、固定価格買取制度(FIT)の買取期間終了後も見据えた再生可能エネルギー(非FIT再エネ)発電事業者の収益拡大、高精度な発電量予測、インバランス低減など、多角的なサービスの展開を目指す。
調整力アグリゲーションでは、自社による調整力用蓄電池の確保に加えて、他の事業者が保有する蓄電池も含めた統合・集約制御サービスを手掛ける。調整力の大規模化と系統安定化に貢献するとしている。
需要アグリゲーションでは、再生可能エネルギーの普及に伴う電力システムの分散化や、変動に対応するための調整力を確保する有効性が見込める手段として、EV(Electric Vehicle:電気自動車)や家庭用蓄電池などのリソースを活用する。
NTTデータのC-Turtleで自社グループのカーボンニュートラルを推進
NTTグループは2024年2月から、NTTデータのGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle(シータートル)」を導入する。自社グループ全体でサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルを実現するとのことだ。
NTTデータのC-Turtleは、削減できるScope3を算定するプラットフォーム。一般的にScope3は「企業の活動規模」と「排出原単位の市場平均値」から算定されるため、企業の削減努力を反映するのが難しい。だが、同サービスはサプライヤーの排出量の実測値(一次データ)を用いており、サプライヤーの削減努力を自社排出量に取り込める。
サプライヤーの排出量の可視化状況を明確にすることで、サプライチェーン全体を通じたGHG排出量を算定可能になり、GHGの削減推進を実現できるという。
NTTグループは2027年度までにGHG削減に取り組むサプライヤーを1000社程度まで段階的に増やす計画だ。サプライヤーとともにサプライチェーン全体での取り組みを継続し、グループ内にとどまることなく排出量の可視化と削減を推進するとのことだ。