花王が導入したダイナミックセル生産システム

花王は12月20日、京都製作所ならびにB&Rと協働し、効率的な少量多品種生産を可能とする「ダイナミックセル生産システム」を開発。花王グループの化粧品グローバル供給拠点である神奈川県の小田原工場(花王コスメプロダクツ小田原)に導入したことを発表した。

ダイナミックセル生産システムとは、セル生産方式とライン生産方式それぞれのメリットを組み合わせた生産方式で、各工程をセルに分け、各セルで稼働する工作機械をクラウド上で接続することで、製品ごとのリアルタイムな工程の変更やラインの組み換えを実現しようというもの。今回、花王などが開発したものは、永久磁石を内蔵した物体を、磁力による反発力または吸引力を制御するプログラミングで浮遊させ動作させるリニア搬送システム「フローティングリニア搬送技術」と、ロボット技術を融合させることで、高速かつ高精度で複雑な搬送を可能としたシステムなっているという。

  • ダイナミックセル生産システムによる生産性の向上のイメージ

    ダイナミックセル生産システムによる生産性の向上のイメージ (出所:花王)

また、製品それぞれを個別に搬送・加工できるため、工程や加工時間が異なる製品を同時に1つのラインに投入して生産することが可能なほか、最小人員での運転と迅速な生産品種の切り替えにより、生活者のさまざまなニーズに対応した製品を必要な時に必要な量だけムダなくつくることができるようになり、効率的で生産性の高い少量多品種生産が実現できるとしている。

2024年初頭より段階的に稼働予定

今回導入したダイナミックセル生産システムは、2品種の製品を同時に生産することを可能としたもので、1人で運転できるため人員を確保しやすくなるという特長があるという。また、交替運転による24時間生産時の生産能力は既存設備で8時間生産を行った際と比較して約9倍となることが想定されており、生産品種の切り替えに要する時間は約6割ほど削減できることが見込まれるとしている。

なお同社は、少量多品種製品の多い化粧品の生産に向けて、2023年内にテスト運転を完了し、2024年の初めから段階的に稼働を開始する予定としており、並行して材料供給の自動化も進め、早期の技術確立を目指すとしているほか、そうした取り組みを通じて今後も生産性向上とコスト効率化、少子高齢化・人手不足への対応、労働環境改善や働きがい改革の実現を目指したいとしている。