Slackは12月20日、日本も含む世界中のデスクワーカーを対象とした、未来の働き方に関する最新の調査「Slack Workforce Index」を発表した。調査では、生産性を最大化すると同時に、デスクワーカーのウェルビーイングと満足度を強化するために、仕事時間の最適な時間の使い方が明らかになったという。

同日に記者説明会を開き、Slack ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス担当SVPのクリスティーナ・ジャンザー氏が説明した。

  • Slack ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス担当SVPのクリスティーナ・ジャンザー氏

    Slack ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス担当SVPのクリスティーナ・ジャンザー氏

グローバルで1万に以上のデスクワーカーを対象とした調査

調査は米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国を含む1万333人のデスクワーカーを対象に、2023年8月24日~9月15日にかけて実施。

調査対象者は、フルタイム雇用(週30時間以上勤務)で経営幹部(社長/共同経営者)、上級管理職(執行副社長、上級副社長など)、中間管理職(部長、グループマネージャー、バイスプレジデントなど)、下級管理職(マネージャー、チームリーダーなど)、シニアスタッフ(非管理職)、専門職(アナリスト、グラフィックデザイナーなど)の担当者、あるいはデータの取り扱い、情報の分析、創造的な思考を担う社員となる。

ジャンザー氏は調査について「定量的な観点と、仕事の質など定性的な視点により、さまざまな示唆が得られた。生産性を高めることは時間外労働も含めて多くの時間を働いてもらうと考えがち。時間外で働くことが生産性を高めることにつながるのか?という観点を持つ必要があり、長時間労働ではなく、質の高い時間を仕事に割くことができたのかを考えるべきだ」と述べた。

説明会では(1)時間外労働、(2)時間配分、(3)生産性、(4)AIツールの4分野について解説された。

4つの視点から見る、デスクワーカーの生産性とウェルビーイング

長時間労働は生産性を低下させる

(1)では、デスクワーカーの5人中2人が「時間外労働が常態化している」と回答し、うち50%以上は自らの選択ではなく、プレッシャーを感じて残業をしていると回答。プレッシャーを感じて残業をしている従業員は、1日を通じて全体的な生産性が20%低下していると回答したほか、日本では37%が低下と回答している。

  • プレッシャーを感じて残業をしている従業員は生産性が20%低下しているという

    プレッシャーを感じて残業をしている従業員は生産性が20%低下しているという

こうした従業員は、そうではない従業員と比較して仕事関連のストレス悪化が2.1倍、満足度の低下が1.7倍、燃え尽き症候群が2倍、それぞれ高くなっている。残業の理由で最も多いのは「1日の時間が足りない」と回答し、標準的な労働時間の従業員と比べて50%の割合で優先事項が多すぎると回答している。

同氏は「例外として、あえて時間外労働を選んだ場合は若干ではあるものの、生産性が高くなることが判明した」と話す。

休憩を取らない従業員は燃え尽き症候群になりやすい

(2)については、4人中1人が会議に時間を使いすぎ、メールに時間がかかり過ぎているとそれぞれ回答し、5人中1人が同僚と交流する十分な時間がないと回答。

また、約半数のデスクワーカーは勤務時間中にほとんど、あるいはまったく休憩を取らないと回答し、日本では63%と対象国の中で最も高く、これらの従業員は高い割合で燃え尽き症候群を経験しているという。

  • 休憩を取らない日本人は63%にものぼる

    休憩を取らない日本人は63%にものぼる

ジャンザー氏は「一度、業務から離れて休憩することは生産性を高めることになる」との見方だ。

集中できる時間と会議の時間はバランスが重要

(3)に関しては(2)にもつながる話だが、定期的に休憩を取る従業員は取らない人と比べてワークライフバランスが62%、ストレス管理能力が43%、全体的な満足度が43%それぞれ高くなり、生産性自体も13%高くなっている。

作業に集中して取り組む時間、同僚らと協働する時間、交流する時間、休憩する時間を最適に配分した「ゴルディロックスゾーン」(ちょうどよい状態)としてはデスクワーカーが「集中して仕事をする理想的な時間」は1日平均4時間程度と回答したことに加え、従業員の大半が会議に「時間を費やしすぎる」と回答する分岐点は1日2時間超となった。

  • デスクワーカーが考えるゴルディロックスゾーン

    デスクワーカーが考えるゴルディロックスゾーン

さらに、デスクワーカーのうち4人中3人が午後3時~6時に勤務しているものの、同次官の生産性が高いと考えているのは4人中1人のみとなっている。加えて「会議に費やす時間が長すぎる」と回答しているデスクワーカーは、業務に集中する時間が充分にないと感じる割合が2倍高くなっている。

ジャンザー氏は「会議自体は悪いことではないが、時間などバランスを考えた会議の開催が重要となる。多くの人たちは自分が集中できる時間と会議に出席する時間のバランスを取ることがポイントなるため、会議が長いほど集中できる時間が削がれるためバランスは重要だ」と念を押した。

AIツールで生産性の向上を感じていないが、今後に期待

(4)はデスクワーカーが仕事にAIを使用したことがあると回答したのは5人中1人のみとなり、80%以上がAIツールで業務の生産性が向上していないと回答。しかし、経営層の94%がAIツールを取り入れいることに一定の緊急性を感じている。

一方、日本では経営層の100%が一定の緊急性を感じており、生産性が向上していないとの回答は91%対象国のうち最下位となっている。

  • AIツールで生産性が向上していないとの回答は91%に達する

    AIツールで生産性が向上していないとの回答は91%に達する

AIツールに従業員が期待していることのトップ33はグローバルが「会議の議事録作成」「文章作成の補助」「ワークフローの自動化」に対し、日本は「会議の議事録作成」「情報の要約」「文章作成の補助」となり、情報の要約がトップ3に入ったのは日本のみとなった。

最後に、ジャンザー氏は「日本では情報の要約がトップ3に入り、デスクワーカーは自分たちの業務を軽減してくれるという期待値が大きい。AIは期待が大きいが、職場で使うために改善が必要だ。AIがどのような形で職場を良くしてくれるかは今後に期待したい」と締めくくった。