アジレント・テクノロジーは12月20日、主に医薬品業界におけるリアルタイムバイオプロセスモニタリングに対応する新たなオンラインLC(液体クロマトグラフ)システム「Agilent 1290 Infinity II BioオンラインLCシステム(Bio LC)」を発表した。
同製品は、医薬品などの製造プロセス現場に設置されている反応層(リアクター)の近くに設置し、リアクターと接続した配管を介して、リアルタイムでプロセスの状態をモニタリングを可能とするオンラインLCで、オフラインLCとして利用できる点も特徴の1つとなっている。
同社は2022年9月より日本市場に向けてオンラインLCシステムの展開を行ってきたが、従来製品は配管にSUS(ステンレススチール)が用いられ、抗体やペプチド、オリゴ核酸などの分析において、吸着が問題となるケースが報告されていたという。Bio LCはこうした問題の解決に向け、外科用インプラントなどの医療器具材料などにも用いられる成体適合性があるBioコンパチブルなマテリアル「MP35N(ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金、35Co-35Ni-20Cr-10Mo合金)」をチューブなどサンプルが接触する各部分に採用。鉄を含まないことから、鉄イオンによって引き起こされるたんぱく質の修飾などを防ぐことを可能としたとする。
また、LCとしての性能は従来機「1260 Infinity II Prime オンラインLCシステム」のリアルタイムモニタリング機能と「1290 Infinity II Bio LC システム」の高い性能やバイオコンパチブル機能を組み合わせた統合システムとして提供されるため、オンラインLC本体のほか、ハードウェアとしてのオンラインサンプルマネージャー、ソフトウェアとしてサンプルスケジューリングやサンプル前処理、メソッド作成/実行、データ視覚化/レポートなどの機能を提供する「AgilentオンラインLCモニタリングソフトウェア」も提供される。このオンラインLCモニタリングソフトは直接もしくは産業機器のデータ交換標準規格「OPC UA」を介して分析を実行できるため、ほかのOPC UA対応機器と連携したデータのやり取りなども可能となっているという。
また、分析とプロセスをつなぐ中核となる「Agilent InfinityLab オンラインサンプルマネージャー」は、リアクターなどから送られてきたサンプルとLCへとつなぐ外部サンプリングインタフェースバルブとオンラインLCへサンプルを送るためのインタフェースバルブに、独自開発による3-Way接続を可能とする六方バルブを採用。これにより、サンプルの逆流を防ぎつつ、メタリングデバイス計量を行い、サンプルの逆流を防ぎつつ、オートサンプル内に必要量のサンプルを取り込むことを可能としたという。これにより、バイアルやリアクターからの直接注入のほか、リアクターから送られてきたサンプルを希釈した後、その一部をLCに注入したり、バイアルからサンプルを採取して一部だけ注入するといったことが可能になったという。
さらに、一般的なフロースルー注入に加え、Feed注入にも対応。Feed注入では、専用のサンプルシリンジを活用してサンプルを移動相の流れに導入することで強溶媒の影響を軽減できるため、サンプル前処理の手順を追加することなく優れたピーク形状と容易なピーク積分を実現でき、難しいサンプルも確実に分析することを可能とするとしている。
なお、Agilent 1290 Infinity II BioオンラインLCシステムは同日より受注を開始しており、価格としてはシステム構成次第とは言うものの、使われている素材がよりサンプルへの影響が低いものへと変更されることもあり、従来モデルと比べると若干の上昇になるとしている。ただし、その分、吸着が懸念される化合物や腐食が懸念される移動相の分析などを高い精度でモニタリングできるようになることから、値段以上のメリットを得ることができるようになるとも説明している。