米国のバイデン政権は12月11日(米国時間)、CHIPS and Science Act of 2022(CHIPS法)に基づく半導体補助金支給の第1号として英BAE Systemsの米国子会社であるBAE Systems Electronic Systemsに3500万ドル支給することを決定。米商務省とBAEが覚書(PMT)に署名したと発表した。
米国ニューハンプシャー州ナシュアにあるBAEのマイクロエレクトロニクスセンター(MEC)は、国防総省の防衛プログラムに沿って軍事防衛用半導体チップを製造するレガシーファウンドリで、6インチのGaAsやGaN HEMTの製造を得意としているという。BAEでは、補助金により老朽化した製造装置を置き換え、F-35戦闘機を含む重要な防衛プログラムに必要なチップの生産を4倍に増やすという。
国家安全保障で必要となる軍事防衛向け半導体を第1号案件に選んだ意義
米国商務省のジーナ・レモンド長官は、「CHIPS法は、米国の長期的な経済成長を支える良好な雇用を創出しながら、国家安全保障を推進し、国内のサプライチェーンを強化するものである。国家安全保障は、兵器システムそのもののみならず、兵器システムで使用される半導体にも関わるものとなっているため、今回のCHIPS法適用は、半導体が米国の国防にとっていかに中心的な役割を果たしているかを示したものである」とし、軍事防衛向け半導体メーカーに第1号案件が決まった意義を強調している。
BAE Systemsの社長兼CEOであるトム・アーセノー氏は、「MECは、次世代の航空機や衛星、軍用グレードのGPS、安全な通信まで、BAEが防衛および航空宇宙の顧客向けに製造する技術と製品の中心となっている。今回の資金により、MECの近代化を進め、米国の国防プログラムに向けた生産能力を高め、国内サプライチェーンの強化を支援することによって、CHIPS法の意義を示すことに役立つ」と述べている。
すでに米国商務省は、CHIPS法に基づく補助金支給に関しては、米国をはじめとして世界中の500社以上が関心を示していることを明らかにしているほか、200件近い申請が提出され、厳格な審査が行われているとしている。
SIAがCHIPS法に基づく補助金支給の開始を歓迎
米国半導体工業会(SIA)は、今回のCHIP法に基づく半導体製造のための補助金支給が決定されたことを受け、SIA会長兼最高経営責任者(CEO)のJohn Neuffer氏が、それを歓迎するコメントを以下の様に発表している。
「今日の発表は、CHIPS法の大きな約束を果たし、米国の国家安全保障、重要なサプライチェーン、経済を強化するための重要なマイルストーンを表している。私たちは、CHIPS法に基づく半導体製造のための資金提供に向けて取り組んできたレモンド商務長官と商務省傘下のCHIPSプログラム担当チームを称賛する。SIAは引き続き、ほかのプロジェクトにも資金が提供されることを楽しみにしており、CHIPS法が今後何年にもわたって米国の半導体生産とイノベーションを確実に活性化させるために商務省の指導者と協力してゆく」