矢野経済研究所が12月13日に発表した調査結果によると、2022年の国内ERP(企業資源計画)パッケージ・ライセンス市場は2021年と比べて10.9%増の1406億円であり、2023年はインボイス対応や案件の大型化などで2桁増が見込まれるという。

2021年の同市場は、コロナ禍(新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大)によるマイナスの影響が軽微となったことに加えて、先送りしていた案件の多くが順当にスタートし、2020年の買い控え分が積み重なったことが市場を押し上げ、2020年と比べて9.3%増の1268億6000万円となった。

2022年は、2021年の伸び率をさらに上回る成長を遂げた。

  • 国内ERPパッケージ・ライセンス市場規模の推移と予測 出典: 矢野経済研究所

2022年の主な成長要因として同社は、1)ビジネス環境の変化や好調な企業収益などから、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが戦略フェーズから実践フェーズに移り始めた、2)企業のIT投資への意欲が高まっており、レガシー・システムのリプレイスや、DXの一環としての経営基盤への投資といった従来からのニーズが継続した、3)中堅以下の企業を中心に、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正に向けた対応への需要が急拡大した、4)大手企業を中心に、これまで自社開発(オンプレミス)が中心であった生産管理システムなどについて、パッケージなどの導入が進み始めた、5)ERPの複数モジュール採用による案件の大型化が進み、またクラウドERPを利用する企業も増加を続けている、の5点を挙げている。

同社は、IT投資はかつてコスト削減が主目的だったが、近年は戦略的な投資だとの理解がユーザー企業で進んでいると分析する。人材戦略を経営戦略に紐付けようとする動きも出たが、人的資本の状況把握やデータ化に課題があることを認識した企業も多かったという。

経営基盤(ヒト・モノ・カネ)を効率的に管理するためには、経営基盤を一元管理し、有効活用する方法(データ・ドリブン経営)が有用と同社は指摘する。ここ数年、ERP市場が堅調に推移している背景には、リプレイスであっても単なるレガシー・システムのリプレイスではなく、経営基盤を再構築するためのリプレイス(攻めのDX/攻めのIT投資)が進んでいるという実態があると同社は見ている。

この動きは大企業に留まらず、中堅中小企業においても、きっかけが保守切れに伴うシステムのリプレイスであっても、検討・導入を進める際にDXを意識する中堅中小企業が増加している。戦略的な投資としてであれば、DXに関連したERP投資は確実に進んでいると同社は見る。

今後の市場動向について同社は、2023年も案件大型化の流れが継続していること、またインボイス制度への対応が10月まで続くとみられることなどから、市場の伸び率は2022年を上回り、2023年のERPパッケージ市場は2022年と比べて11.5%増の1568億1000万円になると予測する。

その理由として、ユーザー企業のIT投資に対する意欲が引き続き旺盛であること、また「2025年の崖」問題や急速なビジネス環境の変化に対応すべく、クラウドERPの導入が増加することなどを挙げている。

一方、今後市場の成長を鈍化させる要因になり得るのは、世界各地の戦争・紛争の激化や、極端な気象変動関連の事象、インフレ率上昇や物価高騰、さらなる円安など為替変動等の影響による、経済状況の悪化だという。

しかし、足元の弱含みの景況下においてもIT投資が堅調であることが伺えることから、同社は2023年の同市場での2桁増を見込んでいる。