パナソニック オートモーティブシステムズは12月13日、同社が開発した後席48型ディスプレイシステムが、2023年6月発売のトヨタ自動車の「Lexus LM」に採用されたことを明らかにした。

後席ディスプレイシステムは、リアシートの乗員に向けたエンターテインメントを提供するためのものだが、ビジネスユースにも利用可能とするための工夫として、テレビやラジオのほか、HDMI端子やWi-Fi接続機能も搭載した点が特徴となっている。また、48型という世界最大級の後席ディスプレイであるということと32:9という横長ディスプレイという特徴と活かし、中央1画面、全画面パノラマ、左右2画面(フルHD×2)の3つのモードを搭載。左右2画面に分割することで、例えば移動中に会議に参加する場合であっても会議映像と資料を別々に表示するといった使い方も可能となっている。

  • 48型後席ディスプレイシステム

    パナソニック オートモーティブシステムズが開発した48型後席ディスプレイシステム。3つのモードが用意されている (提供:パナソニック オートモーティブシステムズ、以下すべて同様)

元々は26型で検討していた後席ディスプレイシステム

パナトニック オートモーティブシステムズによると、当初の想定は26型で後席ディスプレイシステムを構築する計画であったという。しかし、車体開発を手掛けていたトヨタ車体から、世界最大の後席ディスプレイを搭載したいという要望があり、48型での共同開発体制にシフトしたという。

画面サイズが変更となったとのことで、改めて新規プロジェクトとしてのマネジメントが必要となったという。そのため、通常よりも短期間で開発を行う必要性に迫られたこともあり、かねてより採用を検討していた「CCPM(Critical Chain Project Management)」の導入に踏み切ったという。

CCPMはプロジェクトの各タスク工数をバッファを省いた最短の日程で設定し、その分のすべてのバッファをプロジェクト全体で管理することで、納期通りまたは納期より早くアウトプットが出るよう管理する手法であり、今回の開発では各タスクを分解して、優先順位付けを行うことで注力する取り組みを明確化。それぞれの進捗度合いを可視化して状況の把握を行うことで、14.5か月という計画期間を12か月で終わらせることに成功したという。

  • CCPMの導入効果

    CCPMの導入によって開発リードタイムの短縮を実現したという

液晶パネル製造ノウハウを活用し、車載向け大型ディスプレイを実現

世界最大クラスと言える48型後席ディスプレイシステムの実現には、パナソニックとして培ってきた液晶パネル開発・製造ノウハウが活用されたという。同ディスプレイシステムはPillar to Pillarのため、側突(車両側面への他車両の衝突)時に衝撃を受けやすく、破損した場合は乗員にケガをさせる可能性があったことから、それに耐えられる内部構造の見直しを実施。フロントパネル、液晶セルアッシー(Assy:アセンブリされたコンポーネントのことを指す)、バックライトアッシーの3層構造を採用したが、自動車ということで振動への対応が課題となったことから、バックライトのベゼル、アッシーから揺れが伝わってくるということを踏まえ、発生応力と許容応力の比較を行い、平坦度と剛性を考慮することで構造成立性を判断。液晶パネル単体ではなく、ディスプレイシステムと一体化する形で考えることで、車載部品に求められる剛性を実現しつつ、ディスプレイ表示面の額縁部分を従来モデル比で42%削減(従来72mmであったものが42mmに削減)することに成功したという。

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  • 開発された48型後席ディスプレイシステムの特長

同社では「トヨタ車体からの衝撃伝達経路などのノウハウ、パナソニックとしてのさまざまな解析技術をワンチームとなって持ち寄ることで実現できた技術」と今回の取り組みが成功した要因を説明しており、今後、自動車メーカーなどからの要望次第ではあるが、今回の経験をほかの自動車にも対応可能との見通しを示しており、安全・安心で快適な移動時間の実現に貢献していきたいとしていた。