東京ビッグサイトにて12月13日~15日にかけて開催されているエレクトロニクス製造の国際展示会「SEMICON Japan 2023」にて、オムロンは、チップレット化など複雑さを増す先端半導体、および電動化の流れを受け需要の急拡大が見込まれるパワーデバイスの生産性向上に貢献する検査装置として、2024年2月以降の発売が予定されるCT型X線自動検査装置の新製品「VT-X950」「VT-X850」を紹介している。
チップレットの検査を高速化する新製品を紹介
半導体の微細化を目指した技術開発競争が進んできたが、1つのチップ内の集積率を向上させるという進化には、すでに限界が到来しつつあるとされる。そんな中で注目を集めるのが、複数のチップを高効率に集積させることで1つのチップとして動作させる“チップレット”だ。
同技術の発展によりさらなる半導体の高性能化が進むことが期待されるが、その一方、複数チップの集積を実現するにはチップをつなぐ接合部が増加するため、より精緻な検査技術が求められる。さらに、部品が多層に積み上がるチップレットでは、各部が重なり合うことで明瞭な撮像ができず、検査の難易度が大きく上がっているという。
そうした中でオムロンは、同社が保有する独自の制御技術・画像処理技術を活用し、高速かつ高精度での検査を実現するCT型X線自動検査装置を開発。先端半導体や小型電子部品向けの検査装置として、2024年春ごろにVT-X950の発売を予定している。
制御と画像処理の技術を活用して高速・高精細撮像を実現
オムロン独自技術を活用した新製品の強みとしては、制御技術を活用した連続撮像技術があるとのこと。VT-X950では、装置を構成する制御機器をシームレスに制御することで、約30秒間でおよそ1000枚の撮像を行うという。これにより、これまで長い時間を要していた検査工程を短縮するとともに、1画素あたり0.2μm~1.0μmの解像度で細かな不良箇所も検出できるとする。
一方で画像処理の部分でも、オムロン独自のAI技術が採用されている。撮像画像はディープラーニングによって処理が行われ、人手を介した作業なく高解像度で判別しやすい3Dモデルを高速で生成する。このため、従来の製造現場では困難だったインラインでの品質検査が可能になるとともに、検査プログラムの作成もAIによって自動化でき、検査技術の属人化からも脱却できるとしている。
パワーデバイス向けの大型部品対応製品も開発
さらに同社は、昨今ニーズが急拡大するパワーデバイスの検査も可能にするため、同様の技術を活用したVT-X850も開発。2024年2月の発売開始が予定される同製品は、主な検査対象としてIGBTモジュールやインバータモジュールなどが想定され、電気自動車(EV)部品の製造工程における検査装置として多くの需要が見込まれるという。 パワーデバイスの検査に対応するため、VT-X850ではX線源の出力を最大160kVに設定。これにより短時間でも安定した画像を得られ、るとともに、封止済みで中身が見えない部品の内部構造についても精彩に可視化することができるとする。
加えて、検査を行うワークのサイズは、高さ最大335mm(上+下クリアランス)、重量最大40kgに対応(搬送治具を含む)しているため、eAxleのような大型機構であっても検査を行いやすい点が特徴だとしている。