NTT東日本(東日本電信電話)の100%子会社である日本空港無線サービス(NAR)は、航空機端末(航空機局)と各航空会社などに設置された端末(航空局)との間の連絡用として、VHF帯域の無線による通話を提供する「A/G(Air to Ground)無線電話サービス」を提供している。

  • 「A/G無線リモート接続サービス」のイメージ

    「A/G無線リモート接続サービス」のイメージ(出典:日本空港無線サービス)

同サービスは、空港ごとに接続した従来の電話機タイプの端末が利用できるほか、専用ソフトウェアの利用により、1台のPCで複数空港のカンパニーラジオの送受信が可能だ。

カンパニーラジオは、飛行機の乗務員(パイロット)と航空会社の担当者が会話するための社内無線設備。同社は国内8空港において、国内外の航空会社約170社にこのサービスを提供している。近年はA/G無線基地局を結ぶネットワークシステムを構築し、複数空港の無線設備を集中拠点から操作可能とする「A/G無線リモート接続サービス」の提供を拡大している。

  • 「専用ソフトウェアによる複数基地局接続イメージ

    専用ソフトウェアによる複数基地局接続イメージ(出典:日本空港無線サービス)

このサービスを利用して、業務の効率化を図ろうとしているのが、トキエア(新潟市)だ。同社は、新潟を拠点にする地域航空会社で、2020年に設立された新しい会社。近々、初の定期便就航路線として、新潟ー札幌(丘珠)の運航を開始する。

また、今後は、新潟空港を拠点に佐渡、神戸、仙台、中部(セントレア)への定期便就航も計画している。同社には、若い人の旅行を応援したいという方針があり、新潟ー札幌(丘珠)でも、「トキユニ」という、満12歳~25歳の人が割安な価格で搭乗できるチケットを販売している。

  • トキエアが利用するATR72-600型機

    トキエアが利用するATR72-600型機(出典:トキエア)

  • トキエアの就航確定路線と就航予定路線

    トキエアの就航確定路線と就航予定路線(出典:トキエア)

A/G無線リモート接続サービスは、集中拠点における複数空港の運航管理業務を可能とし、特に拠点の限られた地域エアライン等の運営や運航管理拠点の集約に有効で、トキエアは、札幌(丘珠)に新たな無線基地局を設置することなく、A/G無線リモート接続サービスのネットワークに収容し、新潟空港ビル内のトキエア運航管理拠点における、就航先空港の航空機との無線通話を可能にした。

  • 新潟空港ビル内のトキエア運航管理拠点に置かれた無線設備

    新潟空港ビル内のトキエア運航管理拠点に置かれた無線設備

フライトプランを作り、当日の飛行ルート、飛行行動、燃料計算等を行って飛行を承認する運航管理を行っているトキエア オペレーション室 運用グループ 運航管理者 上田真也氏は、同サービス導入のメリットを次のように語る。

「無線機は見通し距離でしか通じないため、通常、札幌(丘珠)への就航にあたっては、現地に拠点を設け、そこで運航管理を行います、今回、『A/G無線リモート接続サービス』を利用することで、新潟で飛行機の運航管理ができます。新潟で拠点を置くだけで済むので、現態勢のまま丘珠に運航管理者を配置する必要はないと点がメリットです。また、現地に自社でアンテナを建て、必要な設備を置くとなるとさらにコストがかかり、札幌に運航管理の拠点を設けるとなると、場所の確保も必要です。拠点を新潟に集約することができれば、コストもかかりませんので、スマートなエアラインの実現にもつながります」

  • トキエア オペレーション室 運用グループ 運航管理者 上田真也氏

    トキエア オペレーション室 運用グループ 運航管理者 上田真也氏

また、サービスを提供する日本空港無線サービス 業務部 企画課長 サービスセンタ 営業課長 大竹宏幸氏は、「トキエア様は、大手エアラインのように人員がいるわけではないので、新たな拠点に人を配置できないという課題がありました。そこで、どういうふうに就航先の飛行機をコントロールしていくのが一番いいのかを考え、リモートで運航管理ができるサービスを提案させていただきました」と述べた。

新たな路線の就航には、国土交通省から航空運送事業の許可を得る必要があり、そのためには無線免許も必須で、日本空港無線サービスではそれらのスケジュールを考慮しながらトキエアの就航計画に合わせ、1年前から無線免許取得のサポートやサービス提供に向けた環境構築を行ってきた。

今後日本空港無線サービスでは、トキエアが計画している就航先空港の拡大に伴ったシステムの拡張を行い、「A/G無線リモート接続サービス」を、新たに設立される地域エアラインが共用可能なプラットフォームとして位置づけ、トキエアと連携して活用範囲を広げていく計画だ。

大竹氏は、「今回、トキエアさんと連携させていただいた1つの目的が、今後、同じように地方空港を拠点としたスマートな体制で就航を計画されてエアラインさんが出てきた時に、『トキエアモデル』として提供したいと思っています。このモデルは1つの拠点で多くの空港を結んでいる飛行機をコントロールするというものですが、実際にこのサービスでエアラインの事業として成り立っているという実績を、トキエアさんと作っていきたいと思っています」と語っていた。