米Marvellの日本法人であるマーベルジャパンは12月12日、都内で記者説明会を開催。Marvell全体の戦略および日本での事業戦略などについて説明を行った(Photo01)。
Marvellとはどのような半導体メーカーか?
そもそも同社は秘密主義を貫いており、それもあって会社の概要が知られていないこともあり、まずはChu氏より本社の状況や戦略についての説明が行われた。
同社は1995年設立のFabless企業で、2023年度の売り上げはおおよそ59.2億ドル。会社規模としては決して大きな方ではない。特に製品が競合することが多いBroadcomがむやみやたらとM&Aで規模を拡大して、ガートナーの半導体製品売上ランキング6位前後、売り上げとしては200億ドル規模なのを考えると、相対的には小さな会社という事にはなるのだが、その分特定分野に特化した形でビジネスを行っている。
さて同社がフォーカスするのはこの4分野である(Photo03)。
具体的に同社が提供する製品群はこちら(Photo04)。
ここに向けて同社は先端プロセスの設計技術や各種のアクセラレータ、様々なIPとこれを支えるPackaging Technologyを保有していることが強み、としている(Photo05)。
では具体的に現在の市場をどう見ているのか、というのがこちら(Photo06,07)。
そして、こうしたデータセンターが増えるor機器が増設されるたびに、同社の製品が売れる(Photo08)という訳で、同社としては昨今の生成AIの急速な興隆はビジネスを大きく広げるチャンスと見ているわけだ。
日本では車載ビジネスを重視
次いで日本のビジネスの話になるが、こちらは重点領域が自動車向けとなる(Photo09)。
トレンドは色々あるが、こうしたトレンドを実装するには広帯域なInterconnectが必要であり、車載向けEthernetがその最右翼、という事実には揺るぎがないからだ。その自動車向けのシステムがDomainからZoneに変わりつつあるという話は何度かレポートした(Photo10)が、同社の欧州における推定では2029年モデルでは9割以上がZone Architectureの採用になるとしている(Photo11)。
Zoneでは必然的にEthernetを使う比率が増え(Photo12)、しかもより広帯域なものが必要になってくるという事で、これに向けた製品展開がメインであり(Photo13)、すでに日本のOEM5社に採用されているという話であった。
現状日本で一番注力しているのが、この自動車向けの高速Ethernetという訳だ。ちなみに10BASE-T1Sに関しては、対応するPHYを内蔵するSwitchは存在するがあまり注力するつもりはないとの事。メインは1Gbps以上を狙うとの事だ。
ちなみに日本の企業に売れているという訳ではないが(何しろベンダーがNECと富士通くらいしか残っていない)、5Gの基地局には同社のDPU(Data Processing Unit)が広く使われており(Photo14)、その意味では日本のマーケットは同社のDPUにとって無縁ではない。また高速Switchのマーケットでも同社の製品は広く使われており、やはり間接的にではあるが日本のマーケットで使われているとしている(Photo15)。
久しぶりに開催された日本での事業説明会
ところで素朴な疑問は「なんでこの時期に、唐突に事業戦略の説明を?」である。実は筆者が記憶している限り、前回日本で開催されたのは2009年の事。当時はIntelから買収したXScaleビジネスについての説明会であったが、もう当然そんなビジネスは過去のものである。これについて「我々も日本でビジネスしてゆく上で、もっと自動車メーカーなどに知名度を上げてゆく必要がある。Marvellと聞いて『ああコミックの?』と言われる状態は問題がある」(Buttrick氏)という事らしい。これがきっかけになって、今後はもう少し広報活動を強化して頂けると助かるのだが……