日新イオン機器は、半導体デバイスを製造する際の材料改質プロセスに対して量産能力を持つ半導体材料改質装置「KYOKA(鏡花)」を開発したことを発表した。
2024年4月より同社の滋賀事業所にデモ機を設置し、顧客へのサンプル処理を開始する予定で、同社では、この成果は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP21009)によって得られたものだとする。
半導体製造に求められる新たなプロセスの導入
昨今、科学技術の発展に大きく貢献すると期待されている人工知能(AI)チップをはじめとした半導体デバイスのプロセスは一桁nmオーダーというレベルまで微細化が進んでいる。また、低消費電力化や高機能化などといったニーズも同時進行的に求められており、新たなプロセスの導入が必要になりつつあるという。
その1つがイオンによる材料の改質で、シリコンや酸化シリコンなど半導体デバイスを構成する材料に低エネルギーのイオンビームを照射することで、元の材料には無い性質を付与させることを可能とするが、このプロセスには多くのイオンが必要となるほか、従来装置では生産性やコスト面での問題もあり実用化の大きな障壁となっていたという。
そうした課題を克服するべく日新イオン機器は、2017年からKYOKAの開発を開始。スマートフォンディスプレイ製造用装置で培った大電流イオン技術を応用して設計を進め、シミュレーションを用いたイオンビームの軌道解析や、機械・電気・ソフトウェア設計の改良を積み重ねていった結果、市場の要求を満たすことができる量産能力を実現したという。
従来比3倍の生産性向上を実現
KYOKAの特徴としては、従来比で3倍となる毎時25枚以上のスループットで材料改質処理を可能とした点。1keV未満の低エネルギー領域を必要とする材料改質プロセスでも超大電流イオンビームでの処理が可能であり、これにより材料改質を適用できる対象範囲を拡大させることで実現したとする。また、さまざまなイオン種を発生させることも可能なため、対象とする材料に応じた最適な改質も実現できるとするほか、300mmウェハに対応しているため最先端の半導体製造ラインへの導入も可能だとしている。
なお同社では、KYOKAを活用することで、材料そのものの機能向上に加えて、材料の持つ性質を変化させることが可能となり、その後に続く半導体加工工程を容易にすることができるようになることから、デバイス性能の向上と製造技術の進歩の両面での貢献が期待できるとしており、今後も、市場が求めるイノベーティブな製造装置をいち早く届けていくことで、半導体産業の発展と持続可能な社会の実現に貢献していきたいとしている。