MM総研は12月12日、「医療受診時のデジタル活用実態調査」の結果を発表した。これによると、電子処方箋の一般認知率は44.2%、利用は3.2%であり、電子処方箋利用者のマイナ保険証利用率は70.9%だった。
半数以上が電子処方箋について「見聞きしたこともない」
同調査は同社が11月17日~21日にかけて、全国18~79歳で直近1年間に医療機関を受診し薬を処方されたことがある人を対象にWebアンケートで実施したものであり、回答件数は予備調査が4338人、本調査が1800人。
直近1年間で医療機関を受診し薬の処方を受けたことがある人のうち、電子処方箋については「見聞きしたこともない」が55.8%を占め、利用経験がある回答者は3.2%に留まった。
医療機関や薬局で、従来の保険証を使わずマイナンバーカードを利用(マイナ保険証利用)した回答者は9.6%であり、従来の保険証とどちらも利用した回答者(21.5%)も含め、マイナ保険証利用率は31.1%だった。
マイナ保険証の利用率は?
受診時に利用するデジタル・サービスの利用状況を見ると、電子処方箋の利用経験がある層はマイナ保険証の利用率が70.9%と高い。さらに、受診時の診療予約、処方された薬の情報管理、医療費の支払いといったシーンではデジタル・ツールの利用率が高く、デジタルへの親和性の高さが示されたと同社は見る。
電子処方箋を利用したことがある割合は、東京圏(1都3県)在住者や「継続受診先数が多い」層で高い傾向にあったという。
電子処方箋でできることを提示し、どの程度利点と思うか聞くと、1)紙の処方箋の提出が不要となり、薬局での受付期限が過ぎてしまう・紛失による再発行が防げる(全体の28.2%)、2)服用している薬の情報を正確に医療従事者が把握できるため、併用禁忌・重複投薬を防ぎやすくなる(同29.2%)、3)服用している薬の情報を正確に医療従事者が把握できるため、医療費負担が減る可能性がある(同22.6%)、4)薬剤師の業務が効率化され、薬局での待ち時間が短くなる(同24.9%)の4項目は、どの層でも上位に挙がった。
電子処方箋を利用したことがある層では1)が利点になるとの回答が59.6%に上り、また利用したことが無い層でも上位になっていることから、現在多くの医療機関・薬局利用者が不便さを感じていると同社は見る。
電子処方箋とマイナ保険証、普及は進むか?
今回の調査に関して、一般生活者側の電子処方箋に対するニーズは高いと同社は見ており、電子処方箋のメリットは一般利用者も実感しやすく、導入のハードルはマイナ保険証と比較して低いと見る。
電子処方箋を通じてデジタル化に慣れることで、マイナ保険証(マイナンバーカード)の普及も加速する可能性が見えたとしている。
しかし、電子処方箋、マイナ保険証のいずれも施設の導入に関する費用負担が大きく、普及が進んでいない状況が続いているという。
電子処方箋やマイナ保険証と同じく2024年内に施行予定の診療報酬改定では医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を促進させる内容が盛り込まれると見られており、医療機関・薬局が積極的に導入に踏み込めるような改定がなされることを期待したいと同社は提言する。