UiPathは12月11日、レポート「自動化とAIのトレンド:2024年版~2つの革新的なテクノロジーが来年どのような価値をもたらすかの7つのトレンド」の日本語抄訳版(英語原版題名:Automation and AI Trends 2024)を発表した。

同社は、1万社以上の顧客や数千のパートナー、数百万人のUiPathコミュニティメンバーによるグローバルネットワークから、常に市場の反応をヒアリングしており、同レポートはこうした知見を基に作成されたもの。

同レポートで取り上げている7つのトレンドは以下の通り。

  • 自動化によって、経営層はAIの価値を理解する
  • AI+自動化のユースケースの需要が高まる
  • 透明性の高い組織への注目が集まる
  • LLMs (大規模言語モデル)がバーチャルアシスタントを強化
  • 自動化自体に「自動化」の要素が追加される
  • 「安全なAI」が人々の行動と革新の焦点となる
  • 業務のありかたの再定義が始まる

上記のトレンドのうち、いくつかをピックアップして詳しく紹介しよう。

自動化によって、経営層はAIの価値を理解する

プロダクトマーケティング部 部長の夏目健氏は、「2024年はAIと自動化が連携して、新たな価値が生まれる年となる。当社のビジネスはRPAによる自動化とシンプルなものから始まったが、ユーザーのニーズを受け、RPAとAIを連携した自動化を進めてきた。現在は、AIはビジネスの現場で使えるものに推進しており、実績も増えていると述べた。

同社の調査では、70%の経営幹部が、業界の未来においてAIを活用した自動化を「非常に重要」または「重要」と位置づけていることが明らかになっている。

夏目氏は、「企業では、社内のシステムやアプリの連携、自動化が重視されている。これはまさにわれわれのコンセプト」と述べた。同社のコンセプトとは「AIが頭脳、RPAが神経系」というもので、RPAによるオートメーションがAI・システム・アプリケーションをオートメーションがつなぐことを意味する。

また、夏目氏は自動化によりAIの価値を短期間で実現することが証明されつつあるので、企業がAl活用の効果を上げるため、オートメーションに目を向けていくことになるとの見解を示した。

  • UiPath プロダクトマーケティング部 部長 夏目健氏

AI+自動化のユースケースの需要が高まる

続いて、ソリューション本部 エバンジェリスト テランドロ・トマ氏が、AI+自動化のユースケースの需要が高まりについて説明した。

  • UiPath ソリューション本部 エバンジェリスト テランドロ・トマ氏

トマ氏は、「ChatGPTは、誰もがAIを利用できるようにしたが、これからは大規模に実践できるかどうかがポイントとなり、そのためのソリューションが必要となる」と説明した。

AIと自動化を組み合わせた「すぐに使えて、成果が出る」ソリューションとしては、インテリジェント・ドキュメント・プロセシング(IDP:データ文書からの情報抽出などを含む、AIを活用した文書処理技術)ソリューションが注目を集めているという。

自動化自体に「自動化」の要素が追加される

昨今、ノーコードソリューションを利用する企業が増えており、自然言語を使って自動化のワークフローを作成する能力が向上しているという。そうした背景も踏まえ、夏目氏は「自動化の進化が期待されている。例えば、手順を説明するだけで、AIが自動化のフローに変換してくれるようなことが求められている」と語った。

また夏目氏は、「RPAのロボットもAIで進化すると思われる。AIによって、ロボットがエラーを自動で修正できるようになる」と説明した。

そして、これまでは自動化を機能させるために、前段階としての手作業が必要な側面があったが、AIにより、自然言語理解の進化や自動修正機能の改善が進み、ワークフロー作成や修正を行う作業が大幅に削減したという。

例えば、生成AIと新しい分析技術により、モデルの学習を自動化できるようになり、最大で80%の短縮が見込まれていることから、夏目氏は「AIが価値を生み出す時間を短縮できる」と述べた。

業務のありかたの再定義が始まる

マッキンゼーによると、大規模言語モデル(LLM)は、80%の労働者の業務の一部を行う能力があり、2030年までに現在存在する仕事の最大30%が自動化される可能性があるという。

こうした状況を踏まえ、夏目氏は、2024年は、以下の3つの領域に対して踏み出すことが重要だと語った。

  • AIの導⼊が進んでいる仕事から学び、業務の設計、活用方法、必要なスキルの定義を行う
  • バーチャルワーカー(ロボットやAI)が実務に及ぼす影響について熟慮する政策やアプローチの策定に重点を置く
  • スキルセットを再定義し、これらを構築する⽅法を再考することで、将来の「AI世代」のための教育システムに新しいアイデアが生み出される

夏目氏は、「デジタルと人が共存する中で、どのようなスキルが求められるか、必要なスキルの再定義が必要となる。これにより、関連するビジネス、スキルの変化が生まれる」と語っていた。