NTTデータと日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は12月11日、保険業界における従業員の生産性向上をAI(人工知能)活用により実現するための協業に合意したと発表した。
両社は、従業員の意図を理解し代わりに業務を実行する、同僚のような仮想知的デジタル・ワーカーである「デジタル従業員」の共同開発や、戦略的販売モデルの提供および共同マーケティング活動などを通じ、新しいデジタル・アセット・ベース・ビジネスの共創を進め、デジタル変革を推進していく。
今回の取り組みでは、同僚のような仮想知的労働者として、保険の営業職員向けのデジタル従業員ソリューションを展開していく。
デジタル従業員は、IBMのAIソリューションである「IBM watsonx Orchestrate」を含む基盤モデルおよびAI技術を使用し、従業員と会話しながら、業務の目的に応じて多様なツールから最適なものを選択し、従業員の代わりに業務を自動的に実行する。
デジタル従業員のコンセプトは、AIを活用したデジタル従業員により、従業員の意図を理解した作業支援、複数システムに関連する一連の作業の自動化を行うというもの。
このコンセプトを実現するために、IBM watsonx Orchestrateと基盤モデルを中核技術に用いて、複数のソリューションを組み合わせつつ、独自AIモデルを提供することで実現する計画だ。
具体的に目指しているデジタル従業員の機能としては、1)標準的な保険商品や事務手続に加え、個社に特化した情報も人に代わって機械学習できる、2)優れた営業プロセスをモデル化した上でサジェストし、ユーザーの行動変容を促すことができる、3)短期記憶により直前の指示を踏まえて、ユーザーの性格など個人の特性にあわせたサジェスチョンができる、の3点を挙げている。
新ソリューションによる新しい価値の創出に向け、NTTデータは、保険業界における経験・専門知識やリソースを使用し、従業員の生産性向上を実現させるソリューションを創出していく。また、保険会社への提案や導入コンサルティング、システム・インテグレーションを提供する。
日本IBMは、同ソリューション開発と競合優位性強化に向けて、企業向けAIとデータのプラットフォームであるIBM watsonxを始めとするAI製品に関し、グローバルの開発部門や製品管理部門を含む技術支援を行う。また、戦略的な販売スキームやマーケティング機会の提供、および保険業界向けナレッジの共有や製品導入に関するスキル・トランスファーを行う。
両社は今後、ソリューション開発を進め、2023年度中に保険会社での試験導入を計画している。2024年度以降に日本の生損保会社への実導入を目指し、保険業界におけるレファレンス・ケースの確立を目標としていく。
また、さらなるサービスの付加価値向上や多様な分野への展開に向けて協議を継続し、日本の従業員の生産性向上や働き方改革の推進に貢献していくとしている。