ロームとQuanmaticは、2023年1月よりウェハに形成された集積回路チップの電気的動作が良好かどうかを判断する半導体製造工程の一部であるEDS工程に量子技術を試験導入し、製造工程における組み合わせ最適化を目指す実証の取り組みを踏まえ、生産効率改善において一定の成果が得られたと判断したことから、2024年4月より本格導入を目指すことを発表した。

  • 本格導入に向けての概要イメージ図

    量子技術の本格導入に向けての概要イメージ図 (出所:ローム)

近年、さまざまな分野で量子技術の活用が試行されるようになっている。特に量子アニーリング方式は物流業界の配送ルート最適化など、組み合わせ最適化の分野において導入が進んでいるという。

一方、半導体業界においては大規模な製造工程になるほど、組み合わせ数が指数関数的に増加するほか、制約条件が多く最適解を得ることが難しいため、古典コンピュータでも近似的に演算可能な規模の工程における導入にとどまっていたとする。

EDS工程に関しても、製造デバイス、テスト装置、テスト条件などの組み合わせ数は膨大であり、工程の一部であっても製造工程を最適化する解の導出は難しいとされ、従来は基本的な計算ルールをベースに蓄積した知見やノウハウを活用してオペレーションを行っていたという。こうした状況の改善に向け、ロームとQuanmaticは2023年1月よりEDS工程におけるさまざまな制約条件を考慮した量子ソリューションを用いたオペレーションシステムの検討を開始。

具体的には、Quanmaticが持つ早稲田大学・慶應義塾大学の研究に基づく量子計算技術効率化のプロダクト群や、量子と古典計算技術を駆使した計算フレームワークや専門的な定式化技術に、ロームが蓄積してきた半導体製造に対する知見やノウハウ、各種データを融合させることで、2023年9月にプロトタイプ構築に成功。

同プロトタイプをロームの国内外の工場に試験導入したところ、稼働率、納期遅延率などのターゲットとする指標をそれぞれ数%ずつ向上できるという実証成果を得とするほか、アルゴリズム化によって計算時間も短縮されるため、製造条件の変更に合わせたタイムリーかつ最適なオペレーションも可能になることも示されたとする。

なお今後両社は、海外工場での試験運用を重ねることでオペレーションシステムの精度向上を図っていき、2024年4月の本格導入を目指すとしている。