アルプスアルパインは、これまで自社製品の内製用に設計・開発を行なってきたICを、アルプスアルパインブランドとして外販することを決定。その第一弾として、静電容量測定回路と32ビットCPUを内蔵し、従来品と比べて高感度・高ノイズ耐性の静電センシングを可能にするIC「HSLCMB series」を開発、国内外での販売を開始したことを発表した。

アルプスアルパインの半導体事業は、2005年のIC設計室が発足して以来20年近くにわたり車載・民生市場に向けて磁気・地磁気・湿度・気圧・ミリ波、静電センサといったさまざまなセンサ用ICの設計開発が行われてきた。

同社のICには、低ノイズAFE(アナログ・フロント・エンド)を中心とした、ミクスド・シグナルIPによる高度な信号処理アルゴリズム、省スペース設計、機能安全対応などの機能が詰め込まれていることが特徴となっており、基本的に自社製品向けに設計・開発されており、顧客にはセンサ電極とICを一体にしたモジュールの形で提供してきたという。しかし近年、センサIC単体での提供を望む声も多く寄せられるようになっており、今回、そうしたニーズに応えるかたちでIC単体での外販を決定、第一弾として静電容量式センサIC「HSLCMB series」の外販を開始したという。

同シリーズの特長としては、同社の従来品に比べSN比(Signal/Noise)が大きいため遠く離れた物体の検出ができるほか、同じ距離であればセンサ電極の小型化もできるなど「高感度」であるという点が挙げられる。

  • 感度特性と耐ノイズ特性のグラフ

    静電容量検出の特長である感度特性と耐ノイズ特性のグラフ (出所:アルプスアルパイン)

また、高いSN比を実現したことで周辺デバイスのノイズに耐性があり、ロードノイズ、エンジンノイズやラジオ電波など信号が飛び交う車内でも車載規格を満たせるといった「高ノイズ耐性」や、センサ電極に存在する寄生容量をシールドするガード電極を、ICが適切に制御することで、対象物の容量のみを検出できる「絶対自己容量検出」が可能な点なども特長として挙げられるという。

同社によると、同シリーズは、近接検出や空間ジェスチャー操作といった新たな入力方式を実現しておりタッチレス操作が可能なほか、高感度・高ノイズ耐性を実現してAEC-Q100 Grade2認証も取得しているため車載タッチパネルとしての利用や、工業製品における液面レベルセンサなど幅広い分野の用途に適用できるとする。

なお、同社は今後さらにラインアップを拡充し、既存の半導体製品の拡販に加え、設計受託活動にも注力していくことで、技術の進化や製品競争力向上を実現していきたいとしている。