ロームと東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は12月8日、経済産業省(経産省)の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」に共同申請していたパワー半導体に関する製造連携および量産投資計画が認定されたことを発表した。
両社によると、この共同計画は東芝D&Sは石川県能美市で建設を進めている新工場で現在主流のシリコン製パワー半導体の生産を強化する一方、ロームは宮崎県国富町にて2024年稼働開始予定の新工場でSiCパワー半導体の生産を行う形で協業し、それぞれの強みを生かして製品を融通しあってコスト競争力を高めることを目指すものだという。
事業総額の1/3を上限に助成金を支給
事業総額はロームならびに同社子会社のラピスセミコンダクタが2892億円、東芝D&Sおよび加賀東芝エレクトロニクスが991億円、総額3883億円のうち1/3となる1294憶円を上限として経産省が助成するという。
ロームは2023年11月にソーラーフロンティアの旧国富工場の資産を取得。同拠点をラピスセミコンダクタ宮崎第二工場として整備し直し、SiCパワー半導体ならびにSiCウェハの主力生産拠点化させることを計画している。
一方の東芝D&Sは、2023年4月に石川県能美市の加賀東芝エレクトロニクスにおいて、300mmウェハに対応する新たなパワー半導体製造棟の起工式を執り行い、新工場建設を開始。すでに既存工場において2022年度下期より300mmウェハを用いたパワー半導体の生産を開始しており、シリコンパワー半導体の生産能力増強を着々と進めている。
経産省が目指す日本のパワー半導体産業強化
経産省では、クルマの電動化や社会のデジタル化に備えて、パワー半導体の競争力を強化し、消費電力の削減などの性能向上やサプライチェーン強じん化を図ることを重要視し、2023年1月に2000億円以上の設備投資に限り集中的に支援する制度を立ち上げた。経産省としては、複数の企業連携や業界再編の呼び水としたいという狙いがあったが、2000億円という額は日本のパワー半導体メーカー単独投資の額としては負担が大きく、業界からも他社との連携の動きは見られなかった。
日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業連合が約2兆円を投じて東芝の株式非公開化を実施。2023年12月20日に東芝の株式は非公開かされる予定だが、この企業連合にロームは名を連ねている。しかし、今回の製造連携はこの動き以前から検討が進められてきたものだと両社では説明しており、今回の認定が同制度の第一号案件となるという。
ローム+東芝でも世界シェアは6.9%
パワー半導体市場の売上高トップは調査会社のOMDIAによると、独Infineon Technologiesでシェアは21.4%。2位のonsemiが10.1%で、トップ10社に日本勢は4社がランクインしているが、三菱電機が5.2%、富士電機が4.7%、東芝が3.7%、ロームが3.2%と、トップとの差はかなり大きい。ロームは東芝と今後、さまざまな可能性を模索する模様だが、もし事業統合をしてもかろうじて日本勢トップの三菱電機は上回るものの、2位のonsemiにも追い付けない。現在もトップのInfineonは巨額を投じて300mmパワー半導体、SiCの両面の生産能力の拡充を図り、2位以下を突き放す動きを見せている。今回のローム・東芝の連携を機に、日本のパワー半導体業界にどのような動きが生じるのか注目である。