竹中工務店は12月7日、ゲームAI(人工知能)と同社が蓄積してきた人流計測データを生かした研究成果を用いて、現実に近い形で人の行動を再現し、建物の建築計画や設計プラン、什器などの配置計画に合わせて建物完成後の使われ方をシミュレーション可能という「人流シミュレーションシステム」を開発したと発表した。
同社がいうゲームAIとは、ゲーム内のキャラクターが実際の人間らしく、自身の周囲を知覚・記憶・思考して振る舞うための機能を指す。新システムの特徴として同社は、人の行動を現実に近い形で再現できることを挙げる。
具体的には、ゲームAIの使用により、シミュレーション上の人間が個性を持っているように周囲の状況に応じて行動を変えることで、実際の人間の行動に近い人流を再現・可視化できるという。
また、平時やイベント時、曜日や時間ごとなど、1つの施設プランでも多様な利用シーンでシミュレーションが可能とのこと。さらに、汎用的なゲームエンジンと3Dモデル(BIM)を使用して構築したことにより、建物や都市空間内での人流をリアルに可視化でき、現実に近い検討が可能としている。
同社ではこれまで、実際の建物内外や広場、駅、展示会場などで人流計測やデータの分析・可視化を行ってきたとのこと。ここで蓄積したリアルな人の流れである人流計測データをベースに、研究成果として得たノウハウとゲームAIを組み合わせることで、人間のように考え行動を行うシミュレーションを実現したという。
これにより、性別、年代、趣味趣向などの要素を組み込み、多様な行動の統計値や計測値を反映した動きが再現できるとしている。例えば、面白い展示物の前で立ち止まったり、疲れた時に休憩したりといった人々の自然な行動を、シミュレーション目的に合わせて多様なパターンで現実に近い形で再現・可視化できるという。
展示施設の計画段階での使用例として同社は、入場口やアプローチ通路の検討に際し、通路幅や出入口の開口寸法を変化させるシミュレーションを行ったことを挙げる。そこでは、既存施設の来場者実績値を使用し、カップルや家族といったグループ構成や老若の世代ななどを条件として反映したとのこと。
その結果、各パターンでの混雑具合をユーザー企業と視覚的に共有し、入場口やアプローチ通路幅などのスムーズな計画の決定に役立ったとしている。
屋外公共空間の計画段階での安全検証での使用例に関して、歩行者と自転車が行き交う屋外公共空間では、滞留などにより歩車の接触が起きやすくなるという。多様な要素を加えることで、より安全で魅力ある公共空間の実現に向けて、対策を講じることができたとのこと。
要素として、想定来場者数・自転車交通の割合・キッチンカーなど人が立寄る施設・周辺のイベント開催による、一時的な通行量増加などを同社は挙げている。同システムの開発により、空間づくりの計画から運用改善まで、人流の側面からの支援が可能になったとのこと。
今後は、AI学習に必要な人流データの計測・収集・分析を通じて最新の情報に更新し、進化するAI技術を活用して、商業施設を始め、多様な建物種別の計画に役立て、ユーザー企業に満足してもらえるプランづくりを進めていく予定だ。