「Shiseido Innovation Conference 2023」が開催

資生堂は、最新の研究成果を発表するカンファレンス「Shiseido Innovation Conference 2023」を開催し、資生堂の未来ビジョンを実現するR&D戦略や、これまで進めてきた肌の免疫研究で得た知見についての発表を行った。

同社は2024年2月にウェルネス領域展開への第一歩の位置付けとして、自分らしい健康美を実現するインナービューティブランド「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」を立ち上げることを発表しており、このインナービューティー事業で活用される予定のソリューションを含めた体験会も併せて実施された。

インナービューティー事業では、肌・身体・心の調和による美の実現に向けた新しいソリューションの開発が進められている。今回の体験会では個々人の指先から測定された毛細血管から健康状態を診断するソリューションや、交感神経と副交感神経の数値を診断するもの、左右の握力を診断するものといった「肌・身体・心の複合測」や、歩行姿勢をスコア化し美肌に導くための理想的な歩き方をアドバイスしてもらえる「歩容測定」などが披露された。

  • 毛細血管を測定する顕微鏡とモニター画面

    毛細血管を測定する顕微鏡とモニター画面

中でも注目を集めていたのが、2024年2月より本格始動するインナービューティー事業で測定ツールとして活用される予定の顔画像から将来の肌悩みを予測することができる「鼻骨格測定」だ。

これは資生堂が100年以上にわたって蓄積してきた研究知見をベースに理化学研究所と共同で構築した独自の新規肌予測モデルを活用したもので、専用アプリケーションをインストールしたスマートフォン(スマホ)で自分の顔を写すだけで、個々人がもつ肌の特徴や将来的に表れやすいしわやたるみなどの肌症状、肌内部の状態を予測してくれるというものとなっている。

研究から分かった鼻の骨格と肌の色の彩度や肌の内部との関係性

資生堂が行った研究では、顔の形状の特徴として、目の丸み、顔の長さ、唇の大きさ、鼻筋(鼻梁)の高さ、あごの丸みなどの12項目、肌状態の特徴として目尻のしわ、フェイスラインのたるみなどの18項目を変数として設定し、40歳から59歳のアジア人女性424名から取得した顔画像や人の目による主観評価をもとに数値化し、解析を実施。その結果、特に鼻の特徴である「鼻根・鼻梁・鼻翼」とシワやたるみといった肌状態とが強い関係性を示したほか、「鼻梁の形状と肌の色の彩度」、「鼻の骨格と毛細血管などの肌内部状態」にも関連性があることが分かったという。

  • 鼻の骨格としわおよび肌内部特性との関係

    鼻の骨格としわおよび肌内部特性との関係。顔タイプAより顔タイプBの方が、しわスコアが高く、顔タイプAより顔タイプBの方が毛細血管密度が高い (出所:資生堂)

同社はこれまでも現在の肌状態について顔画像を用いた評価技術を開発してきたが、一人ひとりの今(現時点)の肌の状態は、「個々が生まれ持つ肌特性」が関わっており、個々人の特性を高く示している鼻骨格に着目することで、将来の肌悩みおよび肌内部の特性を予測できるのではないかと考えツールの開発に着手。手軽に使えることを目的に一般的な性能のスマホのカメラで取得した画像から、鼻の形状を正確に捉えることを目指したが、鼻と肌の色は同じであり、形状を細かく検出することが困難であったという。そこで顔画像に映し出されたわずかな鼻の影に着目する形で研究を進めていったところ、精細に抽出可能な画像処理技術の開発に成功。これにより一般的なスマホのカメラ性能でも、鼻根、鼻梁、鼻翼を含む、鼻の骨格特徴を検出することができるようになったという。

実際に肌予測ソリューションを体験してみて感じたこと

開発された肌予測ソリューションは、画像解析技術と鼻の骨格と肌状態や肌内部との関係性に関する知見を組み合わせ導きだされた16種類の顔タイプに分類されており、顔タイプに基づいて将来的に表れやすい肌悩みと肌内部の状態を予測してくれる仕組みが採用されている。

  • 肌予測ソリューションの外観

    肌予測ソリューションの外観。スマートフォンとディスプレイで構成される

  • スマートフォンの画面

    スマートフォンの画面

実際に体験してみたが、操作としてはスマホで自分の顔を指定の位置に合わせて撮影するだけのため、誰でも簡単にできると感じた。撮影後は診断結果が目の前にあるディスプレイに表示される。

  • 肌特性と肌の将来予測された顔イラスト、レーダーチャートなどが診断結果として表示される

    肌特性と肌の将来予測された顔イラスト。ほかにもレーダーチャートなどが診断結果として表示される

診断結果をもとに、まずは肌特性について説明してもらえるのだが、これまで自分が薄々感じていた肌の悩みをズバリ言い当てられおどろいた。肌特性の説明の後には、結果から導きだされたやっておいた方が良い予防ケアや個々人に合ったマッサージ法、身体の内側からのケアなど、よりパーソナライズされたアプローチ方法も担当の方から提案してもらえるため、どういったことをこれから取り組んでいけば良いのか、といったことで悩む必要もない。

現在の肌の状態は、紫外線対策などのスキンケアや、食事、運動、睡眠、喫煙などの生活習慣の影響も関わっているため、そうした生活習慣を改善することも必要ではあることも重要であるが、自分が持っている肌特性を知り、未来の自分の肌を予測することができるようになれば、肌ケアに対する心持ちも変わって、より良い肌になるように自分と向き合えるようになるのではないだろうか。