宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月5日、2023年9月7日に打ち上げた小型月着陸実証機「SLIM」の現状、ならびに今後の予定について明らかにし、2024年1月20日に月着陸に挑む予定であることを発表した。
SLIMミッションの2つの目的
SLIMは、月への100mオーダーという高精度着陸技術の実証と、軽量な月惑星探査システムの実現による月惑星探査の高頻度化の2つの実現を目指して実施されているミッション。特にピンポイント着陸は、2000年代に打ち上げられた月周回衛星が撮影した高解像度な画像をもとに、月のどこにあるどういった岩石にアプローチしたいといった研究者ニーズに応えることを可能とする技術で、今後の月の水探査における、太陽光が1年を通してまったく当たらない永久影の境目に降り立つためにも実用化が求められている技術となる。
また、その着陸技術も搭載された航法カメラを活用した画像航法による自己の位置推定をベースとした、自律的な航法誘導制御を採用。垂直降下時には、着陸レーダも活用した高度・地面相対速度の精密計算も併せて、画像ベースの障害物検出・回避も自律的に行い、危険な岩などを避けて安全に着陸することを目指している。
月着陸は2024年1月20日を予定
SLIMは2023年12月5日時点では、10月4日に実施した月スイングバイに伴い、11月6日に地球からの最遠点となる約130万km付近を通過し、地球や月に近づいていくコースにいる。
この後は、12月25日に600km×4000km(近日点高度×遠月点高度)の月周回軌道投入(LOI)が実施される予定。その後は、2024年1月中旬までかけて軌道修正および軌道高度変更を実施し、600km×600kmの円軌道へと投入され、1月中旬に150km×600kmへと軌道高度を変更。1月19日の22時40分ころ(日本時間、以下すべて)に軌道高度を15kmまで(15km×600km)下げる運用を実施し、そのまま翌0時0分ころに着陸降下を開始(動力降下フェーズから垂直降下フェーズへ)、同0時20分ころに月面着陸となる予定としている。
なお、JAXAでは、着陸降下開始時の探査機速度は秒速約1.8km(時速約6400km)で、強い減速を行いながら、半径100mの円の内部への着陸を目指すが、そのピンポイント着陸の成否を判断できる精度の評価にはおおむね着陸後1か月ほどの時間が必要との見通しを示している。